[1557]三井物産の労組が労務管理分野に参入

 

 3月8日の日経新聞を見て驚きました。本来は会社の労務部がやるような仕事を労働組合がやるようになっています。

三井物産、労組が人材戦略 キャリア開発の要に  120職場のニーズ分析、副業など実現

2024/3/8付日本経済新聞 朝刊

 三井物産労働組合が働き手のキャリア開発の要になっている。約4千人の全組合員を対象とした調査で、働きやすさのデータをスコア化し、約120の職場ごとに課題を分析する。経営側に人材戦略を提言し、大手総合商社として初の幅広い副業制度などにつながった。日本の労組は賃上げ交渉に傾斜してきたが、働きがいを実現する新たな役割も重要になる。

以下略

 働きがいを実現するのは労組の仕事ではありません。三井物産労組は企業組織に組み込まれています。三井物産だけではなく他企業の大労組も同様になってしまっているのではないでしょうか。

 労働者が自分の労働に充実感を覚えるというのは悪いこととは思いません。私もそういう気持ちは経験的にわかります。しかし会社が言う働きがいの実現というのは会社の生産性向上の目的意識を労働者の意識に移し入れその気にさせるということです。

 政労使一体化路線に沈み込み労働運動が沈滞している中で、仕事の現場で日々生起する労務管理の強化や人間関係の軋轢を一つ一つ解決するために労働組合が組織的に取り組んで来たのも今は昔。

 生産性向上の実現の陰には労働者同士の関係に軋轢を伴います。

 多くの労働者は人間関係のトラブルを回避するために個の殻に閉じこもってしまっています。生産性向上を強いる会社、資本家に向かってたたかうはずが働く仲間同士のいがみ合いに転化をすることが日々起きています。そしてハラスメント防止法に依拠することによって経営者に働く仲間を職場から放逐させてしまう労働者も出てきています。パワハラと規定される労務管理行為は経営者の生産性向上の号令で職制が現場労働者を「ムチ打つ」ことを指します。しかしその行為を単に処罰によって解決しても根は残ります。その都度労働組合が関係者の意見を聞き、チームワーキングの中で生じた対立を解決していかなければならないと思います。

 三井物産では労働組合が生産性向上を働きがいにしていくことを組合員に求めていくというようになってしまいました。

これは産業報告会の今日的形態です。