[1145]経団連の『経営労働政策特別委員会報告』

 経団連の『2023年版経営労働政策特別委員会報告』を買って読んでいますが、まず買うのがちょっと大変です。本屋に行って店員に「ケイエイロウドウセイサクトクベツイインカイホウコク」はありますか、と聞いても「ハッ?」と言われ、長いので言うのも大変ですが、一回言うだけではわかりません。「経団連が出している冊子で……」といってやっと探してくれます。そして読みはじめると頻繁に使われる・英語をカタカナ文字で書いた言葉がわかりにくく、サッと読んでも意味がわかりません。「労働生産性の向上」という言葉が何度も出てくるので、経団連労働生産性を向上させよということが言いたいんだなということはわかります。

 日本の資本家階級を代表する日本経営者団体連合会は、毎年この冊子(本)で労働組合(「連合」)の賃上げ要求に対して資本家・経営者の春闘方針を公表します。日本の企業総体は、この冊子で打ち出された基本方針にのっとって、ないし参考にして労働組合に対応します。もちろんこの冊子では個別企業の経営労務政策にまでは踏み込んではいませんが、資本家・経営者の一年間の雇用・労務管理施策にかんする考え方と春季労使交渉の方針が明らかにされています。

 われわれ労働者の交渉•闘いの相手が何を考えているのか分析し把握するために、私は決して面白くはないこの冊子を毎年読んでいます。

 例えばこの数年間、経団連は日本型雇用の転換を薦めています。ジョブ型雇用(職務別雇用)と言われている雇用形態を日本の大手が次々と導入しつつあります。ジョブ型雇用は終身雇用、年功序列型賃金制度の最後的解体を意味する大転換です。日立やNTTをはじめ、電気、情報、メガバンク、ゼネコンなど大手企業のリーダーがこの委員会に入っており、率先垂範してジョブ型雇用に転換しています。この傾向は徐々に中小企業に波及していくと思われます。

 この報告冊子でのべられていることは2023年•日本の資本家階級の羅針盤としての意味を持っており、労働者の働き方、生活に大きく影響するので読む必要があります。

 序文に戦後の日本型雇用の特質をなした終身雇用制から「労働移動」型雇用へと大転換することが述べられています。労働生産性を向上させより多くの剰余価値を取得したい資本家は、生産性を高めるために生産過程のデジタル化を進めています。デジタル化された労働手段を使うことができない労働者を解雇することができるように諸規制を緩和し、解雇した労働者を安く雇用できるような雇用システムを作り出そうというわけなのです。

次回、序文に沿って考えていきます。

つづく