[1446]労災多発 先端技術で防げるか?

 2022年労働災害による年間の死傷者が13万2533人になりました。過去20年で最多です。死者は755人です。1日に360人以上の労働者が死傷していてもメディアで伝えられるのはその一部だけです。

 テクノストレスによる過労死はクローズアップされることはありますが、製造業、建築業など怪我はよほど大事故でなければ報道されません。メディアが報道を抑えていることもあると思われますが、報道しきれないほど頻発しているということです。

日経新聞を参照します。

 労働災害の発生件数が高水準で推移する中、企業が職場の安全環境改善に本格的に取り組み始めている。JFEスチール三井化学などが先端技術を用いたリスク管理策を打ち出した。働き手の安全配慮は企業価値向上に欠かせない。

 2022年に労災による死傷者数は13万2355人で過去20年で最多、発生頻度も約30年ぶりの高水準だ。熟練労働者不足が事故多発につながっている。

以上22日経新聞

 JFEスチールはAIを使って階段の昇降時に手すりにつかまっていない労働者に注意を促し、三井化学は過去20年の「ヒヤリハット」のデータをAIにインプットし特定のキーワードを打ち込むと事故の発生可能性や被害予測が提示されるシステムをつくったといいます。

 事故の背景には労働者の高齢化もあると言われています。企業はテクノロジーの活用で事故を防ぎたいのでしょうが、生産性向上を強いられる労働者は安全対策の機器スイッチを切ってリスクを侵すこともありうるのです。

 私の経験ですが労働組合のなかには「怪我と弁当は自分持ち」と陰で言いながら、企業経営者と幹部が「安全パトロール」をやっているところもありました。組合がこれでは労災事故はなくなりません。個々人の労働者の注意だけでは事故は防げません。

 事故防止は生産性より安全を優先することです。たとえば流れ作業中、自分の部署にトラブルが起きたとき機械を停めると減産するので機械を回したまま不具合をなおすことはよくあります。そういう時にはさまれ事故がおきます。減産することを覚悟して一旦機械を停めれば流れ作業中の他の人にも「迷惑」をかけることになるので停めるのは「勇気」がいります。

 それを1人で実行するのは簡単ではありません。労働組合が組織的に経営者とたたかって防止策を勝ち取らなければなりません。