[1635](寄稿)医療あれこれ(その109)−1 前立腺がんについてその後

ペンギンドクターより

その1

皆様
 いよいよ暑さも本番の季節になってきました。いかがお暮しでしょうか。
 新型コロナの登場以来、二週間に一度ほど、この医療関連情報を自分の経験を交えてお送りしてきましたが、コロナも落ち着いたので、コロナ前の月に一度程度に戻します。というのも、月に10冊を目指す読書ははかどるものの、読書記録が4ヶ月ほど溜まってしまって、おっつかなくなってしまいました。さらに最近はクラス会などで出かけることもあり、時間が足りなくなった次第です。その分、医療情報は十分精選してお送りするつもりです。よろしくお願いします。
 
  まず、PSA7.41ng/dlの私の「前立腺がん」の件です。結論を先に言いますと、前立腺結石に伴う前立腺炎によるものと泌尿器科部長の診断で、今後1年に1度のPSA検査で経過をみることになりました。「大山鳴動してネズミ一匹」も出ず、と言えるかもしれません。ただ、私はいつか降って来る「病」に対し、いいトレーニングになったと考えています。では、時系列で経過を振り返ります。
 4月19日(金)午前中人間ドック受診、その日の午後検診センターの責任者より電話連絡あり、「前立腺のエコーで影があり、検査室に問い合わせたところ、PSA(前立腺特異抗原)が昨年1.8、今年7.41と急上昇しているので、4月26日(金)の泌尿器科部長の外来を予約したらどうか」とのことでした。翌週の仕事日である4月23日(火)に自分のデータを見たところ、確かに間違いありません。4月26日(金)の部長の外来では、初対面ですので丁寧に挨拶をしたうえで診察を受けました。「直腸診」では、右側にやや硬い感じの所があるものの、ガンの固さとはことなるという印象とのこと、またドックのエコー検査では、前立腺結石が疑われ、それに伴う炎症が疑わしい・・・・・・時間をおいてPSAの再検が望ましいとのことでした。私としては、急速にPSAの値が上昇したので念のためにMRI検査を追加してほしいと希望しました。
 5月16日(木)は仕事の日でしたので、午後2時、採血とMRIを受けました。
 そして、5月24日(金)の部長の診察を受けました。MRIの写真を丁寧に一枚一枚見せてくれて、(私はMRIの画像についてはまったくの素人なので、頷きながら聞いていました)この画像では、炎症かガンが疑われるが、この画像ではガンが否定される・・・・・・とさすがに専門家としての解説でした。そのうえで、放射線科の医師の診断をみて「やはり間違いありません」と一致したことを教えてくれました。さらに、5月16日の採血でのPSAの値は、2.57と正常化していました。
 私はホッと一安心でしたが、以下のやり取りを続けました。「前立腺肥大はどの程度でしょうか」「重症ではありません、中等度です」「排尿については、昔ほどスッキリせず、徐々に出しづらくなっています。まあそれほど苦痛ではありません。夜間の頻尿、大体一晩で2回ほど量が少ないのにトイレに起きるのですが・・・・・・」と伝えたところ、「それは過活動膀胱ですね。副作用の少ない薬剤を20日分処方しておきます。」とのことで、診察は終了しました。
 
 PSAの値が自転車に乗ると上昇するのは、サドルの部分がちょうど前立腺を押し上げる形になるせいです。また前立腺肥大によるPSAの軽度上昇も起こります。また前立腺尿道を取り囲んでいる部分が内腺でそこが肥大すると尿が出しにくくなるなどの症状が出ますが、ガンは尿道を取り囲む部分からは発生せず、外腺から出るので、排尿障害は初期には見られず、直腸診が有効となります。ガンは一般にゴツゴツして固いので、診断が出来ます。そのへんの知識はありましたが、炎症だけでこれほどPSAの値が上昇するとは思いもしませんでした。何しろ、昨年と今年で「炎症」に変化があったとも思いませんし、4月と5月で特に変わったこともないのに、急速に低下したのも不思議です。
 まあしかし、ホッとしました。過活動膀胱の薬はベシケアと言います。医療者ネットワークで宣伝しています。前立腺肥大と過活動膀胱の薬は、理屈から言うと相反する症状および薬剤となると思っていましたので、知ってはいましたが、外来でも男性には自分で処方せず、泌尿器科受診を勧めていました。現在私は三日間内服していますが、あまり効果はないようです。Iさんもそうおっしゃっていました。過活動膀胱はあると思いますが、高齢になると眠りが浅くなり、どうしても途中覚醒が多く、そちらが大きな原因となっているように思います。
 また、前立腺生検は原則的に1泊2日の入院となる(虎の門病院など)ので、生検の前にPSAの値を調べて、持続的に上昇するようなら、MRIでチェックし、腫瘍が疑われると、生検するという方向が主流のようです。
 私の場合、今回は来年PSA採血でよいとのことですが、先日健診の患者さんのケースでは50歳の男性で、PSAが3台に上昇し、外来受診へ、そして3ヶ月後に採血し、4台にさらに上昇した人がいました。多分MRIを撮影し、状況によっては生検となると思います。高齢男性においては最も多いガンですので、皆様も出会うことになるかもしれません。
 以上、私の「前立腺がん」の話題でした。お騒がせしました。