[1663](寄稿)医療あれこれ(その110)ー1大腸がんについて

ペンギンドクターより
その1
皆様
 梅雨空ですが、梅雨入りが遅れしかも梅雨明けは早いという情報もあります。今朝はだんだん雨が強くなるというウェザーニュースの予報がありましたので、6時に町内パトロールに出かけ、帰宅してラジオ体操をしました。ひどかった腰痛が徐々に良くなりつつあります。腰痛悪化の原因の一つは、粗大ごみに出そうと二階から使われなくなったベッドを下ろそうと夫婦二人で頑張ったのですが、階段でひっかかり、動かせなくなってしまったせいもあります。結局頭側のベッド枠を私がいささか無理な姿勢のまま鋸で引き切ってようやく下ろすことができました。粗大ごみは一個当たり1000円払うと市の方で引き取ってくれます。「そのうち私も粗大ごみに出されるかな」と広くなった部屋を見ながら、夫婦でホッと一息つきました。 
 築30年以上経ったので、いろいろ住まいもガタがきており、シャッターの電動化や窓のペアガラス化などのリフォームを開始しました。平均寿命まで私はあと5年、女房はあと13年、いずれ我が家も空き家になるわけですが、私が仕事をしていて、多少収入の余裕があるうちにリフォームをしておこうということにしました。20年前後使用した電化製品が壊れて買い替えたり、いろいろガタが来るのは人間と同様ですが、今回の家のリフォームで一連の作業の区切りとする予定です。
 
    さて、皆様のうち、ご存知の方も多いと思いますが、先日Kさんから大腸がんの手術で切除した病理標本の報告が来ました。結果は「切除標本にガンの遺残はまったくない」ということで、今後は3か月に一回の外来受診は続行するものの、抗がん剤などの治療はまったく不要との朗報で、ゴルフの予定など計画しているという嬉しい情報でした。ひとり暮らしなので食事などには注意しているし、時に自炊もしているとのこと、秋の鎌倉でお会いしましょうと結ばれていました。
 最もいい病理検査結果でした。そのことについて、長文の病理検査結果の解釈を述べた返事を出したのですが、長すぎたせいで送信できませんでした。そこで、大幅に簡略化し、「最もいい検査結果だった。ただし、ガンにかかったという意味では、また他のガンになりやすいことでもあり、残っている大腸、胃、食道などアルコールやタバコ関連のガン、高齢者の前立腺がんなど、さらに肺などのチェックも含めて、年に一度の人間ドックを勧める」とメールしておきました。
 最初に書いた私の文章の内容をここで述べておきます。Kさんが、手術直後に外科医の先生に、薬剤の使用でガンが縮小・消失したということは手術しないでもいいということかと質問したようですが、外科医としては手術すべきだと私も思います。
 というのは、薬剤の効果が著明でもだいたい一部にわずかなガンの遺残があることが多いからです。当初手術不能だった理由は、ガンが巨大で他臓器(切除不能な大動脈や大静脈などがある。一方昔は膀胱や肝臓その他への浸潤が著明だと手術不能としていましたが、今は技術の進歩でこちらは合併切除可能です。)への浸潤があったからでしょう。それがガンの縮小により切除可能となったわけです。
 そして切除標本にまったくガンがなかったという結果は、切除しなくてよかった(手術が負担となって術後いろいろ合併症を起こし死亡や後遺症が残ったという場合はしなければよかったということになるでしょうが)というわけではなく、浸潤していた大動脈等はそのまま今も体内にあるわけですから、そこにガンの遺残はまずないだろうと安心できるわけです。さらに細かなことを言えば、病理検査というのは、切除した大腸標本のだいたい5-6ミリの幅の割面の数ミクロンの標本を検査するわけです。そこにないからと言って、はるかに膨大な標本が未検査のままあることになります。つまりガンがないという結果は検査した範囲での結果なわけです。今までの薬剤では、ガンが縮小して切除不能が切除可能となった場合、外科医としては満足でも、患者さんの治癒が期待されるというのは、それほど多くはありませんでした。
 ところが、今回のKさんの場合、遺伝子検査でどのような抗がん剤が有効かというデータがあったわけで、副作用もそれほど強くなく、しかも極めて著明な効果を示したわけで、これは喜ぶべき結果でした。
 このように、最近の大腸がんの治療法は大きな進歩を示していて、Eテレの「CHOICE」やその他の健康番組でもコメントされています。
 ただしすべてがすべてではありませんので、期待しすぎてもいけません。 
つづく