国軍クーデターにたいするミャンマー労働者・農民・学生の闘い
ミャンマーで軍政(ミン·アウン·フライン司令官)に反対する労働者民衆が連日反政府デモをおこなっています。国軍は非武装のデモに発砲し4月3日現在で550人以上の人が殺害されました。しかしなお不屈の闘いがつづけられています。
軍のクーデターにたいして2月22日、政党や労働組合、農民組織、学生運動、その他のグループから成るゼネスト委員会はゼネストを決定し決行ました。ミャンマー製造労働者連盟(IWFM)は、ヤンゴンのラインタヤ郡区で数千人の労働者を動員したたかいました。
地元メディアによると、ヤンゴン、マンダレー、ネピドー、ピンマナの街頭を数十万人が埋め尽くし、軍政の廃止を要求しました。そして多くの企業が共感して事業を閉鎖して闘いを支援したのです。
カイン・ザーIWFM会長は決意をのべています。
「これは民主主義のための闘いだ。軍事政権下では、労働者の権利も人権もなく、誰もが恐怖と緊張を感じながら生活し、労働者の苦情や抗議はもはや許されなくなることを理解しなければならない」
「2010年まで、労働者は低賃金と長時間労働を強いられ、何であれ使用者が与えるものしか得ることができず、最低賃金保証も社会保障もなかった。独裁政権が復活すれば、我が国から投資が引き上げられ、多くの人々が失業するだろう」
ミャンマーの労働組合のリーダーはこう呼びかけ闘いをけん引しているのです。
軍のクーデターに抗議して医療労働者が不服従のストライキを行っています。国軍は医師の拘束を強化していますが、コロナ検査は軍系の医療センターに限られ、病院の閉鎖で医療体制は機能不全になっています。けれどもヤンゴンの医師コ·ヘットさん(41)は東京新聞の取材にたいして「多くの患者がいることは理解し、デモで感染が広がり、それを国軍政府が制御できないことも予想できる。だが、運動に参加しなければ国全体が苦しむことになる」と訴えました。
4月1日、ILO(国際労働機関)理事会において、労働者グループがミャンマー軍のクーデターを非難する声明を発表しました。
声明の中で、2021年2月1日のミャンマー軍のクーデター、その後の市民に対する暴力・殺害を強く非難しました。そしてミャンマーの労働運動の呼びかけを全面的に支持することを表明しました。
日本の労働組合「連合」も2月3日、事務局長談話を発表し軍のクーデターに抗議しました。がしかし、その後のミャンマー国軍の暴力的弾圧にたいする抗議の闘いは呼びかけてはいません。
少数民族の武装勢力がミャンマー国軍のデモ弾圧に警告を発しています。AFP通信を紹介します。
【4月1日 AFP】国軍のクーデターによる混乱が続くミャンマーで、軍によるデモ弾圧に対し報復を警告するなど、国内の少数民族武力勢力に注目が集まっている。
ミャンマーは1948年、英国の植民地支配から独立。文化、民族、言語が異なる複雑な国家が誕生した。
シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」によると、ミャンマーの国土の約3分の1が、20余りの武装勢力によって支配されていると推定される。この大半が、国境沿いの地域だという。
主な武装勢力には、ワ州連合軍(UWSA)、カレン民族同盟(KNU)、カチン独立軍(KIA)、アラカン軍(AA)、タアン民族解放軍(TNLA)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)が含まれる。
長年軍事政権が続いた後、一時的に民政に移管したミャンマーでは2015年以降、10の武装勢力が政府と全国規模の停戦合意に署名した。
だが、北部カチン(Kachin)州やシャン(Shan)州、西部ラカイン(Rakhine)州など一部地域では戦闘が続き、民間人が巻き込まれることもあった。
中国の支援を受けるUWSAは、常時2万5000人の兵力を持ち、非国家武装組織としては世界最大勢力の一つとなっている。
2月1日、国軍がクーデターを起こし、アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問を拘束すると、複数の武装勢力は直ちに軍を批判した。
ミャンマーで最も古い武装勢力KNUは、クーデターは国家に損害を与えると非難。一方、シャン州復興評議会(RCSS)は、国軍は「民主主義のあらゆる規範」に違反しており、信用できないと述べた。
さらに、TNLA、MNDAA、AAは3月30日、軍が弾圧をやめず、人々の殺害を続けるなら、抗議デモ参加者らと協力し反撃すると、報復を警告する共同声明を発表した。
(c)AFP
4月4日のNHKドキュメントによれば、若者が武装し闘う訓練をはじめているという。
注目すべきことは、ミャンマー東部の中国、ラオス、タイとの国境沿いにUWSAという大きな武装勢力が存在し、中国の支援をうけているということです。インド洋と中国を結ぶ天然ガス・原油パイプラインがミャンマーを縦断しており、また昆明―ヤンゴン間の高速鉄道建設を進める中国にとってミャンマーは重要な位置を占めているのです。どうしてもミャンマーに足場を確保したい中国はUWSAにテコ入れし協力関係をつくっていると思われます。また、3月27日のミャンマー国軍記念日式典には、ロシア、中国、インドの代表が出席しました。中国はアウンサンスー・チーのNLDであれ国軍であれ中国との経済的政治的パートナーとしたいのです。
国連の動き――欧米と中ロの対立――
この軍の暴虐にたいして各国の対応は一様ではありません。
3月31日国連安保理事会緊急会合が開かれましたが、ミャンマー軍政に制裁を課すことを主張する欧米と制裁に否定的な中国、ロシアなどとが対立しました。中国は張軍国連大使が会合で「一方的な圧力や制裁は情勢を悪化させ複雑にするだけだ」と発言しました。
1日夕方、議長国ベトナムは「情勢の急速な悪化に深刻な懸念を表明するとともに平和的な抗議デモに対する暴力の行使と、女性や子どもを含む数百人の市民の死を強く非難した」と発表しました。
ただし「暴力を強く非難」などの表現は、前回の会合後に発表された議長声明とほぼ同じ内容のうえ、今回の発表は議長声明や報道機関向けの声明より格下の談話となっています。
欧米諸国が武器の禁輸などの制裁を求めたのに対し、中国やロシアが反対して安保理として具体的な行動を打ち出すことはできず、反軍政の闘いへの弾圧が続いているにもかかわらず、国連安保理は対応不能となっています。
中国は軍政への制裁に反対
米国はミャンマー国軍に資産凍結と貿易協定停止などの経済制裁を発動しています。そして日本の茂木外相は軍と対立する勢力との対話をこれから働きかけていくと述べるにとどまっています。
中国は4月2日王毅外相がマレーシアのヒシャムディン外相と会談し、記者会見で、米英の対ミャンマー制裁を念頭に「出しゃばって勝手に圧力を加えるべきではない」と批判を展開しています。
王外相によると、両外相は、軍とデモ隊双方に自制と情勢悪化の回避を要求した、と発言していますが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の内政不干渉の方針に賛同し、ASEANが今月中の開催を予定するミャンマー情勢に関する特別首脳会議に支持を表明しました。
中国はミャンマーにかんしては政治的経済的思惑があり様子見をしています。この点は中国がミャンマー軍事政権にたいする制裁には反対し、強いコミットは避けているということに端的に示されているのです。
自国の利益のためにのみ動く自称「社会主義国」中国・ロシアの対応とアメリカの対応には警戒しなければなりません。ミャンマーの労働者階級・農民・学生が犠牲者を出しながら軍政打倒の闘いに立ち上がっているいま、私たちは支援の声を上げていこうではありませんか。
中国の動きについては警戒して注目する必要があります。
つづく