[534](投稿)原発作業員 の声

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 原発作業員 (卓上四季より)

作業中の熱中症や事故の中には、報告もされず労災にならないものもあった。安全管理の不備を理由に仕事を受注できなくなる恐れがあった。失職を恐れる作業員もかん口令に従うしかない▼東京新聞の片山夏子記者が長年の作業員への取材をまとめた「ふくしま原発作業員日誌」(朝日新聞出版)は、作業員が「イチエフ」と呼ぶ東京電力福島第1原発の収束作業の過酷な実態を告発する▼年間平均20ミリシーベルトの上限被ばく線量も年度が変われば新しい枠が与えられた。生涯線量が500ミリシーベルト近いという男性も。一方、危険業務で年度の線量を超えれば容赦なく解雇される。30代の男性は「使い捨てにされた」と話す▼札幌市の元作業員が東電や国損害賠償などを求めた訴訟で札幌地裁判決はきのう、収束作業で被ばくしがんを発症したという主張を退けた。因果関係の立証の難しさが浮き彫りとなった形だ▼NHKクローズアップ現代+(ぷらす)は2018年3月、事故直後の「緊急作業従事者」の多くが健康状態を追跡する国の調査に応じていない実情を報じた。3人が緊急搬送された現場で作業続行を命じられ、検査もなかったと憤る作業員は「国は信用できない」と不信感を募らせた▼次世代のため、故郷のため。覚悟を胸に現場に向かった作業員の健康を守ることは、東電と国の責務だろう。労災基準の検証と丁寧な健康状態の調査が不可欠である。

(2021・5・14 卓上四季 北海道新聞デジタルより)

※※※ 原発ジプシーのコメント:

 われわれ原発で働く「作業員」は、年間20ミリシーベルトを超えない範囲で働くことを強いられています。通常は、年間1ミリシーベルトであった上限が20倍に引き上げらのです。福島第一原発事故によって、政府と電力会社が、自然界の天地が与える放射線の許容範囲を引き上げなければ、到底福島第一原発の事故の「収束」を期待できないと観念し、異常な高さの放射線原発で働く労働者を曝(さら)したのです。

 しかし、チェルノブイリ原発事故と同じレベル7の極めて過酷な原発事故なので、年間20ミリシーベルトという基準値はあっという間に超えてしまいます。そのため、労働者を雇用する請負会社は労働者に限度を超えてでも働くように強いることになり、また下請けの労働者も賃金を稼ぐために放射線感知器を新しいものにすり替えたり、粘土などを使って放射線感知器をカバーし放射線量をなるべく上がらないようにする「工夫」をしたりして検査官の目をごまかすのです。検査官もこのような事態が常態化していることを知りながら見てみないふりをします。そうしなければ、検査官も取り換えられ失職する恐れがあるからです。まさに、放射線障害は人体だけに厳しい影響を及ぼすだけでなく、その前に失職する・生活困難を生じるという危険な産物も生み出すのです。また、早くから同じ原発だけで働くと線量がオーバーするため、途中で新しい放射の感知器を更新して、次の場所にある原発で働くということを繰り返し渡り歩いて働く「原発ジプシー」とも呼ばれる労働者も多数存在しています。

 その結果、収入を得るために原発労働者として働くことを余儀なくされ、長年の目に見えない放射線に暴露され、放射線障害の蓄積によって身体に様々な影響を与えられ、種々の癌だけではなく、心臓血管系、脳神経系、肝臓や腎臓や筋肉系統などに様々な病気になることが分かっています。

また、広島や長崎の原水爆で被曝された方や、チェルノブイリ原発事故で被曝された方や、米ソの核軍事競争で放射線を浴びさせられた兵士たち(「アトミックソルジャー」と呼ばれています)の多発性癌や種々の障害が生じることからも既知の事実として知られていています。

 札幌市の元作業員が東電や国に損害賠償などを求めた訴訟で、札幌地裁判決は今年も5月に「収束作業で被ばくしがんを発症した」という主張を退けました。「因果関係の立証の難しさ」という「屁理屈」を盾(たて)に取った非人道的な判決であるといわざるを得ません。また、これこそ国や電力会社に忖度した判決以外の何物でもありません。

 「NHKクローズアップ現代+(ぷらす)は2018年3月、事故直後の『緊急作業従事者』の多くが健康状態を追跡する国の調査に応じていない実情を報じた。3人が緊急搬送された現場で作業続行を命じられ、検査もなかったと憤る作業員は『国は信用できない』と不信感を募らせた」のは当然のことです。健康被害の検査も追跡調査も含めた調査もしなかったことなども取り上げなければ、この先も同じ被害を受ける原発労働者を生むことを容認したことと同じです。これは経年劣化した原発で、極めて危険なMOX燃料を使い稼働させている原発推進を促進している国家の下(もと)にある裁判における犯罪です。

 私たち多くの労働者は、このような不当な判決と歪んだ原発の推進に対して弾劾の声を上げていきましょう。