[652](投稿)総裁選「表紙」と「中身」

f:id:new-corona-kiki:20210924061748j:plain
表紙と中身
09/17 05:00
[PR]
明治から大正にかけて出版された夏目漱石の本は美しい装丁が特徴の「漱石本」として知られる。猫のイラストがちりばめられた「吾輩ハ猫デアル」、花に囲まれた女性が中国絵画風に描かれた「明暗」▼その魅力をノンフィクション作家の稲泉連さんは、しっかりと作り込まれた本は「芸術品たり得る」と評した(「『本をつくる』という仕事」筑摩書房)▼名作と優れたデザインが融合すれば魅力は増す。反対に駄作に装いを凝らしてもメッキはすぐに剥がれ落ちよう▼自民党総裁選がきょう告示される。思い出すのは1989年、当時の伊東正義総務会長が語った名言「本の表紙だけ変えても中身が変わらなければダメだ」。リクルート事件で政治不信が極限に達し、退陣に追い込まれた竹下登首相の後継総裁に推されたが固辞を貫いた。派閥解消をはじめとする政治改革に本腰を入れなければ意味がないとの趣旨だった▼派閥はしぶとく生き残ってきたが、往時の活力にはほど遠い。長く続いた「1強」の首相とその継承者にもたれかかり、権力の分け前にあずかってきたのが実態のように映る▼柱が倒れた今、誰を表紙にすれば政権を維持できるか。党内の大方の関心はそこにあろう。ページを繰れば、相次ぐ政治とカネの事件や公文書改ざんなど1強の生んだ「うみ」がいや応なく目に飛び込んでくる。中身の議論の方をぜひお忘れなく。
2021・9・17(北海道新聞コラム「卓上四季」より)


■■■ 森論外のコメント
 自民党総裁選挙に関連した面白いコラムです。1989年、当時の伊東正義総務会長が語った名言「本の表紙だけ変えても中身が変わらなければダメだ」。リクルート事件で政退陣に追い込まれた竹下登首相の後継総裁に推された伊藤正義総務会長は固辞を貫きました。。これは「派閥解消をはじめとする政治改革に本腰を入れなければ意味がないとの趣旨だった」そうです。
 その後も派閥政治は生き残り、派閥政治が「長く続いた『1強』の首相とその継承者にもたれかかり、権力の分け前にあずかってきたのが実態のように映る」と喝破しています。「柱が倒れた今、誰を表紙にすれば政権を維持できるか。党内の大方の関心はそこにあろう。ページを繰れば、相次ぐ政治とカネの事件や公文書改ざんなど1強の生んだ『うみ』がいや応なく目に飛び込んでくる。中身の議論の方をぜひお忘れなく」と「やんわり」中身のある人選をという願いが込められています。
 果たして、今回の総裁選挙はどのような「中身」となるのか?雲行きが怪しく感じられるのは私だけでしょうか?皆様はどのようにお見立てでしょうか?