[675]新資本主義会議に連合会長も

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「新資本主義会議」15人起用
 芳野友子連合会長も

 岸田首相のキャッチフレーズ「成長と分配の好循環」の具体策を話し合う「新しい資本主義実現会議」が10月15日に設置されました。

 衆院選前に急遽つくられたこの会議は、選挙対策のひとつだということは明らかでしょう。男女ほぼ同数、80代から30代の老壮青のバランスをとり、流行りの渋沢栄一の玄孫も起用して好印象を醸し出したいという思惑が見えます。やはりドタバタ感はぬぐえません。
 15人の構成員のなかに先の連合大会で選出された芳野会長が入っています。選挙前のこの時期でもあり芳野会長は会議の政治的な意味を承知の上でしょう。「新しい資本主義実現会議」の今後の進み方・内容を批判的に注目しなければなりません。
 それにしても情けないのは700万人の労組ナショナルセンター連合のトップがいま岸田首相の呼びかけを受諾し「新しい資本主義」づくりに無条件で参画したことです。労働運動のリーダーは「会議」の資本家的本質に警鐘を鳴らさなければならないというのに。まあ愚痴を言っても仕方がありません。それが2021年労働運動の水準を端的に示しています。腹を据えて運動の現状をコツコツと変革していかなければなりません。

どの党も「分配」をいいはじめた

 10月15日の日経新聞が「分配」論の常識的な問題点をわかりやすく書いています。
 「与野党は31日投開票の衆院選に向け、経済政策で競うように『分配』を掲げる。国全体で稼いだ富を、もっと中間層や低所得者に配るべきだという主張だ。しかし、その前提となる国の富をどう増やすかはどの党も示してはいない。高成長の時代と同じ発想で分配すれば、成長せずに借金が膨らむだけだ。」
 「分配」はコロナ危機のなかで貧窮する国民に現金を支給することだけではなく税金や賃金に関わることについてもいわれています。ここでは賃金に関して考えます。
 岸田首相は賃上げをはかるともいっています。企業の利益を従業員にもっと分配すべきという考え方です。そのためには成長を実現しなければならないということです。

 しかし経済学本質論の観点からいうならば、労働者は企業の利益を分けてもらっているのではありません。企業の成果と労働者の賃金とは直接関係がないのです。
 労働者は商品=労働市場で労働力の再生産および生産に必要なその時代・地域の平均的価格で労働力商品を売るのです。賃金は本質的に前払いなのですが現実的には生産の結果を見届けた上で後払いという形式をとるので、「労働の対価」「労働の価格」として現象します。しかしそれはそう見えるということであって仮象にすぎないのです。賃金とは労働力商品の価値の貨幣的表現です。「労働の価格」は労働力商品の価値がとる仮象形態なのです。
 労働力を買った資本家は、モノやサービスを生産する生産=労働過程で労働力の使用価値を生産諸手段の使用価値とともに消費して、剰余価値をふくむ新たな価値が付加された商品を生み出すのです。新たな価値はすべて資本家のものです。労働者は自分のつくった成果=パイの分け前をもらうわけではないのです。労働者は生産過程で搾取されているのです。搾取とは資本制経済に特有な資本家による剰余価値の合法的な取得のことをいうのです。
 いわゆる「国の富」というのは生産過程で労働者の疎外された労働によって生み出された剰余価値の総和に他なりません。国の富を増やせというのは労働者にもっと働いて多くの剰余価値を生み出せということです。
 「分配論」は仮象を本質と見なした謬論です。賃金を上げてほしいならもっと働いて成果をだせという考えは、より多くの搾取を求める資本家階級のイデオロギーなのです。
 労働運動のリーダーは労働者にとって「分配論」は本質的にまやかしだということをはっきりさせた上で、新型コロナ危機のなかで困窮した生活を改善するために賃金闘争を推進すべきではないでしょうか。
労働組合員より