[1024]「新しい資本主義」のメニュー

 9月22日岸田首相がニューヨークで「新しい資本主義」のメニューを発表しました。

①NISA(少額投資非課税制度)の恒久化

②GXの推進

③ジョブ型雇用への移行。

 ①は日本資本主義の行き詰まりを賃金抑制によって乗り切ってきた総資本の政治的代表である政府が、労働者、庶民に株や金融商品に投資させ、実質低下した賃金収入を投機的利益によって補填することを促すものです。

 ②はロシア制裁のおつりでもある原油高騰によるエネルギー危機に将来不安をもった政府が脱炭素を口実として原発依存の姿勢を鮮明にしたということです。

 ③は広がる一方の格差を、職種職務別雇用によって仕事のグレードによって賃金が違うのは当然として、賃金格差を正当化すること、にほかなりません。

①は投資の勧めです。日本では30年平均賃金がほとんど上がらず、労働運動が火の消えた炭のようになっているため低賃金のままでこの先も上がる保証もありません。本業だけでは足りないので投資収入に頼らざるを得なくなっている労働者も増加しています。  

 NISAは将来が不安な労働者がコツコツ貯蓄したお金を投資のために動かして「自助努力」で老後に備えよと推奨されています。

 少額投資非課税制度は2023までの時限制度です。それを延長する案を岸田首相は提案しました。

②は脱炭素型社会に転換させるためにエネルギー政策、産業構造、社会システムを変える取り組みをするということです。岸田首相はその中心に原発の新増設、建て替え、老朽原発の耐用年数の延長をあげています。福島第一原発事故は今なお復旧の目処さえたってないのに、反対の声を無視して財界の要請に従っています。

③は雇用形態の転換です。1991年にバブルが崩壊して日本の経済危機が深まりました。1990年代半ばから終身雇用、年功序列型の雇用形態、賃金制度が企業経営を圧迫する根拠として忌避されはじめ成果主義賃金制度と非正規雇用の導入が追求されました。

 資本家・経営者は労働市場で買い入れる労働力の所有者すなわち労働者の雇用形態を正社員雇用から非正規雇用に置き換えることによって賃金コストを圧縮することに成功しました。90年代半ばから労働者派遣法の適用対象が広げられ、労働者の約4割が低賃金の非正規雇用労働者となりました。資本家階級の思惑通りこの30年間日本の労働者は総体として賃金が上がっていません。

 労働組合運動に労資協調主義が持ち込まれ派遣法の改悪を容認しかつ賃上げを自粛したためです。

①〜③の施策は日本の労働者にとって全くいいことはないと思います。

労働組合