[1042]困窮する庶民 連帯の機運 その2

 イギリスは今、トラス新政権が打ち出した法人税減税をはじめとした経済政策に財源の裏付けが明示されていないこともあり金融市場が動揺しています。国債とポンドが急落し、イギリス経済は大混乱。金持ち優遇措置に国民の中からブーイングの声が上がりました。危機に立ったトラス新首相は14日予算案の撤回とクワルテング財務相の更迭にふみきりました。

 予算案にたいしてはイギリスの労動者、庶民の反対の声が強くなっていました。ブレイディさんのコラムはそれをリアルに伝えています。

 発表されたトラス政権の小型補正予算案を解説するテレビ番組を病院の待合室で聞く人々の話を紹介しています。

 「トラス政権の小型補正予算案発表の日、私は病院の待合室にいた。その場にいた人々はみな、テレビに映し出されたニュース番組の経済対策案の解説にに見入っていた。

財務相は、1970年代以来、最大規模の減税を発表しました。』というブロードキャスターの言葉に周囲がざわつく。『いいニュースじゃないか、久しぶりに』と独り言のように言った男性もいた。

 だが、『銀行員の上限が廃止されます』という言葉で、一斉にブーイングが起きた。さらに『年収15万ポンド(1ポンド160円換算で2400万円)以上の納税者に課せられていた45%の最高税率を廃止』と解説されると、『なんて驚きだろう!』と皮肉っぽく言った女性や、怒りの表情で首を振っている若者もいた。」

 情景が目に浮かびます。引用を続けます。

 「トラス政権は基礎税率を20%から19%に引き上げることをも発表した。約310万人の納税者が恩恵を受けることになるそうで、平均で月額14ポンド(2240円)の減税になる。だが、高額所得者対象の45%の税率が廃止されれば、例えば年収20万ポンド(3200万円)の人は月額200ポンド(3万2千円)以上の減税になることが説明されると、人々は一斉に近くにいる人と会話を始めた。                

 『要するに、金持ちがもっと金持ちになれば経済成長するっていう政策じゃないか』 

 『上のほうがもっとリッチになれば投資して人を雇うようになるから、だんだん金が下のほうにも落ちてくるっていう、この考え方、なんだっけ、ほら、昔よく聞いた、なんとかダウン』          

 それ、トリクルダウンですね、と思いながら私は周囲の会話に耳を澄ませていた。」

 

 こういう会話がイギリスの市井で盛んに行われたのでしょう。イギリスの鉄道関連労働者は10%の物価値上げの中で賃上げ闘争を波状的ストライキで闘っています。

 トラス政権はこの減税案を17日に撤回しました。

つづく