[1049](寄稿)医療あれこれ(その70)

ペンギンドクターより
その1
皆様
 本日は雨模様でずいぶん冷え込んでいます。数日続いた秋晴れも一雨ごとに寒さが増していく感じです。
 今朝は傘をさして公園散歩に出かけました。ウェザーニュースのおかげで一時間毎の雨量・気温・風速などがわかるので、何時ごろに散歩すべきか予定をたてることができます。おかげで今年は一日も欠かさず8000歩超を記録しています。11月上旬には連続365日となる予定です。また女房が脂肪肝の克服のために毎日歩くことを励行するようになって、一緒に散歩するわけではありませんが、8000歩に到達しない時は、家の中をかつての母の部屋を含めて小走りに移動して歩数を稼ぐということもお互いやるようになりました。
 私は散歩中、樹木の名前を確認しながら歩くのですが、殆んどの樹木の名前を知ってしまいました。そこで今は雑草の写真を撮り後ほど図鑑その他で名前を確認しています。雑草の名前の確認は容易ではありません。少しずつ調べています。
 ところで、雑草の王様は何だと思いますか。私はメヒシバ(雌日柴)(オヒシバと区別しにくい)だと思います。そこら中にあって強靭な根をもち草むしりの老人を悩ませるイネ科の植物です。たくましい雑草です。さらに目につくのはエノコログサ(別名ネコジャラシ)でしょう。一年草です。この二つが私の感じる雑草族の王様・女王様です。コンクリートの隙間の僅かの土を糧にメヒシバが生えているのを見ると、頑張っているなと思います。雑草に興味を持つようになって、ますます散歩が楽しくなっています。ただし、下ばかり見ていて人にぶつからないように注意する必要がありそうです。
 
 本日はコロナに感染した人の体験談(MRICの主張)を再び送信します。その意見は後述です。
 
 紆余曲折のあった塩野義製薬の「ゾコーバ」が何とか認可されそうです。9月28日、塩野義からの報告でCOVID‐19治療薬候補エンシトレルビル(商品名ゾコーバ)の第Ⅱ/Ⅲ相試験の第Ⅲ相パートでプラセボに比べて有為な症状改善が認められたとありました。しかし、このことについて、医療従事者ネットワークではニュースのみの報道でした。塩野義製薬からの報告でしたので、半信半疑でした。その後の報道を列挙します。
 
 ●「緊急承認念頭に審査」 塩野義飲み薬巡り厚労省 
 行政・政治 2022年10月20日(木)配信 共同通信社
 塩野義製薬が開発中の新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」について、加藤勝信厚労相20日参院予算委員会で「国産治療薬への期待は大変高いと認識しており、緊急承認も念頭に速やかな審査を進めていきたい」と述べた。公明党の谷合正明氏への答弁。
 この薬を巡っては、中間段階の臨床試験(治験)で十分な改善効果が得られなかったことなどから、厚労省の審議会は7月、緊急承認を見送った。塩野義が9月、最終段階の治験で、オミクロン株に特徴的な五つの症状が消えるまでの期間を短縮させる効果を確認したと発表していた。
 加藤氏は「当該企業から(最終段階で)良好な結果が得られた旨、発表され、現在順次データが提出されている」と説明した。
 緊急承認制度は、通常の承認と異なり、治験の完了前でもデータから有効性が推定されれば実用化できる。
 
 ●第131回 姑息な手より急がば回れ、塩野義コロナ薬が第Ⅱ/Ⅲ相で良好な成績
 2022年10月21日  バズった金曜日 ジャーナリスト村上和巳
 本連載で何度も辛口で触れてきた塩野義製薬の新型コロナ3CLプロテアーゼ阻害薬エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)の試験でプラセボに比べて有意な症状改善が認められたという発表である。
 第一報に触れた時は「ようやくか」という印象だった。ちなみにこうした反応をすると、SNS上では手の平返しと言われるらしい。だが、私が従来からこの薬に辛口だったのは、承認前の塩野義製薬幹部による政治家へのロビー活動、稀少疾患治療薬向けの条件付き早期承認制度の拡大解釈的利用、はたまた主要評価項目が未達の第Ⅱb相パートのサブ解析を多用したアピールなど、あまりにもフライングが多すぎるからである。なので、第Ⅱ相パートで結果が出ないなら、その結果を踏まえて試験設定を見直し、それで良好な結果が出たら正々堂々と承認申請すれば良いという立場である。
 <以下細かなデータがありますが、省略します>
 また、第Ⅲ相パートは、緊急承認制度の申請時に提出したデータの教訓を生かし、主要評価項目を「オミクロン株感染時に特徴的な症状(鼻水/鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさ/発熱、倦怠感・疲労感)の消失(発症前の状態に戻る)までの時間」とし、主要解析対象集団は新型コロナ発症から無作為割り付けまでが72時間未満の被験者としている。
 
 ざっくり言えば、臨床効果でも社会的な捉え方でもインフルエンザでのオセルタミビル(商品名:タミフル)のような位置づけと言ってよいだろう。第8波の備えの一つとはなりうる。
 
 国産のアビガンやイベルメクチン(抗寄生虫薬:大村智氏がノーベル賞を受賞した)の有効性が否定されて治験が断念された日本の現状でやっと国産の有効性のあるCOVID‐19治療薬が認可となるようで、目出度いことではあります。村上氏が述べているように物議をかもすことの多かった薬剤ですが、実際に軽症者に使われるるようになれば、その効果が実感されて来るのではないでしょうか。in vitro(試験管上)ではウイルス減少効果は認められている薬剤ですから、より病原性の強い変異株にはさらにゾコーバは効果ありということになりそうですし、今後は供給体制と副作用のある薬剤ですから、臨床医師や国民への使用上の注意など周知の徹底が要請されるでしょう。
 それにしても日本感染症学会と日本化学療法学会の物議をかもした「提言」は、どういうことになるのか……。
 この話はここまでとします。
つづく