[1113]中国、感染が広がる

ゼロコロナ後、医療労働者の不足が深刻

 ゼロコロナ政策を転換した中国では医療体制の脆弱性が露呈しています。新型コロナ感染症が拡大しはじめた当初は街をロックダウンして感染拡大を防ぎましたが、2年半後このゼロコロナ政策に中国全土で抗議闘争が展開されました。不況局面を打開するためにも習近平政権はゼロコロナ政策を転換せざるをえなくなりました。その結果感染は広がり、死者も増加しています。

 今から言えば、中国ではとりわけ地方の医療体制が不足しており、ロックダウンして感染を封じ込めるしかなかったといえます。また医療体制の弱さが社会的に明らかになることを避けるためにゼロコロナ政策で中国人民を強権的に家に閉じ込めたともいえるでしょう。

 

朝日新聞デジタルを紹介します。

 

中国コロナ、医療の人手不足深刻 医学生ら各地で抗議、実習生急死も

2022年12月19日 18時30分

 新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大が続く中国で、医療従事者の深刻な不足が起きている模様だ。政府は医学生らも動員しているが、待遇への不満などから抗議活動も起きている。習近平(シーチンピン)国家主席ら党指導部が懸念していた「地方医療の脆弱(ぜいじゃく)さによる重症者や死者の増加」が、現実味を帯びつつある。

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 香港メディアによると、12日に江西省福建省など少なくとも6カ所で、医学生らによる抗議活動が一斉に起きた。コロナ感染者の急増に伴い発熱外来の現場に動員された臨床実習生らが、労働条件の改善を求めて立ち上がったという。感染リスクへの対策が不十分であることに加え、実習生の手当が月1千元(約2万円)程度であることに不満が広がった。

 そんな中、四川省成都市の病院で患者の対応にあたっていた23歳の臨床実習生が14日に急死した。前日に倒れるまで3日連続で発熱外来を担当していたとされ、新型コロナに感染した可能性が疑われた。

 だが、大学側は「心臓疾患による突然死だった。両親が同意しなかったため検視はせずに火葬場に送った」と発表。不自然な対応に、SNS上では怒りの声が広がった。

 政府は、地方の医療資源不足を認めており、国家衛生委員会幹部は、15日の会見で『地域レベルの病院すべてに発熱診療を開設するよう求めている』と強調した。

以下略

私の意見∶

 当時、武漢を封鎖し新型コロナウイルスの封じ込めに成功した習近平は「社会主義体制」の優越性を誇らしげに語りました。が、あれから3年近く経って習近平が誇った「ゼロコロナ政策」が破綻しました。

 あのロックダウンは人びとの行動を規制することによって人から人へのウイルスの移動を封じました。それは強権的な権力行使によるものであって感染症にかかわる医療体制の強化に裏打ちされたものではなかったのです。

 こんにちの中国社会は資本主義の経済合理性が支配しています。平時には大きな感染症医療体制は「ムダ」なものとみなされ、その時に必要最低限の規模に淘汰•再編されてしまうのです。

 こんにちの中国は、「社会主義市場経済」という中国的資本主義イデオロギーを標榜する中国共産党が牛耳る国家です。資本家階級の利害を体現した•転向したスターリン主義党•国家官僚によってレギュレイトされた資本主義国家がこんにちの中国です。

 歴史的にはソ連邦自己崩壊の翌年1992年10月の中国共産党第14回党大会で「『社会主義市場経済体制』の確立を目指す」という文言が総書記江沢民報告に盛り込まれました。それは過渡期社会建設の枠内で市場経済的な政策を部分的に採用するというのではなく、「社会主義市場経済」という概念をつくりそれを経済建設の戦略的イデオロギーへと高めたものです。南方講話で改革開放政策を説いて回った鄧小平は党内左派との闘争に勝利し、中国の資本主義化を基本方針としていったのです。

 

 コロナ対応に破綻し、後退局面に入った資本主義中国経済を立て直すのは容易ではないと思います。

 中国は不況に入っています。そして人口減、感染者の増加によって労働力不足に陥っています。アメリカを超えると言われた巨竜はコロナパンデミックの果てに大きな壁に突き当たっています。

 中国資本主義社会の苦境について、朝日新聞の「中国新世 人口減が始まる」シリーズの報告に学びつつ次々回から書いていこうと思います。