[1115]暮れゆく2022年

 自衛隊幹部が特定機密保護法違反で書類送検された上、懲戒免職されました。

 彼は何をやったのか、さっぱりわかりません。

 12月26日の毎日新聞はこの事件を次のように伝えています。

 

海自1佐を懲戒免職 特定秘密漏えいで、防衛省が初公表

 安全保障上の機密にあたる「特定秘密」を外部に漏えいしたとして、防衛省は26日、当時の海自情報業務群司令で、現在は幹部学校に所属する井上高志・1等海佐を懲戒免職とした。特定秘密の漏えいが公表されるのは初めて。

 防衛省は井上元1佐のほか、幹部学校の50代の1佐(当時・自衛艦隊司令部情報主任幕僚)を停職5日とした。また、いずれも既に退職している当時の自衛艦隊司令官海上幕僚長を減給や戒告とした。

 防衛省によると、井上元1佐は2020年3月、自衛艦隊司令官を務めた元海将に安保情勢の説明をする際、防衛省の収集した情報や自衛隊の運用に関する情報のうち特定秘密にあたるものを漏らしたとされる。

 説明は元海将からの依頼で20年2~3月に計3回、行われた。元海将から外部への漏えいは確認されていないという。20年3月に情報提供があり、防衛省が調査していた。

 特定秘密は安全保障に関わる情報のうち、外交、防衛、スパイ防止、テロ防止の4分野で、特に秘匿する必要があるものについて14年施行の特定秘密保護法に基づき、政府が指定している。【内橋寿明、安達恒太郎】

 

 毎日新聞を読んでもよくわかりません。

 神奈川新聞は浜田防衛大臣の話を紹介していますが、何があったのかこれを読んでもわかりません。一応引用します。

 

 浜田靖一防衛相は27日の閣議後記者会見で、海上自衛隊の1等海佐特定秘密保護法で定められた「特定秘密」を漏らしたとして懲戒免職になった問題について「幹部自衛官による秘密の漏えいは国民の信頼を損なうものであり、極めて遺憾だ。大変重く受け止めており、信頼回復に全力を尽くす」と述べた。

 浜田氏は「自衛隊の円滑な運用を担保し、わが国の防衛を全うするためには情報保全の徹底が不可欠。情報部門に緩みがあった」と指摘。漏えいの再発防止策に関しては「防衛省全体に知らしめていくには、かなり思い切った策も考えなければならない。今後、議論し方向性を出していきたい」と説明した。

 

私の感想:

 幹部自衛官による秘密の漏えいは国民の信頼を損なうもの、と言われても国民の信頼を損うほど悪いことをしたのなら何をしたか具体的に言わなければ、防衛大臣の独り言のようなものになります。でも具体的に言えば大臣が特定秘密保護法違反になるということなのでしょう。

 これは井上自衛官の或る行為と元海将の聞く行為にたいして、機密保護法を適用した人の認識力判断力の正しさを前提にしています。これでは「朕曰く……」のようになってしまいます。

 そして公表しておいて「国民」の質問には答えない。朝日新聞が29日の天声人語で井上一佐から情報を提供されたとされる元海将の戸惑いを紹介して揶揄しています。

 

「……機密を教えられた元海将は警務隊の取り調べのときでさえ、黒塗りの文書を見せられたと共同通信に語っている。『真っ黒だったから何か分からず、話が通じない状態だった』▼あなたは秘密を聞きましたか。何が秘密かは秘密ですけど――。まるでそんな法律である。」

 

 落語のようですが、笑うだけではすまされないような気がします。自衛隊の反撃能力の保持をはじめ、今岸田政権は日本の針路を大きく右に切りはじめています。この時期にこの事件が公表されることに、強い違和感と危機感を私は感じます。

 何をやったか社会的に客観的に明らかにしなくても、逮捕され裁かれる世の中になりました。そしてそのことがメディアを通して公表されても日本の社会は受け入れ、2022年は静かに暮れていく······。

 読者のみなさま、来年もよろしくお願いします。