[1250]朝日新聞コラム「日常風景に現れる戦争」

 

 山本章子さん(琉球大学准教授)の「沖縄季評」を読みました。

 沖縄には未だに不発弾1893トンが未処理のまま埋まっているといわれています。米軍は78年前に太平洋戦争で撃ち込んだ砲弾を放置し、51年前に核基地付きで施政権を日本に返還しました。国や県は不発弾処理に年間約30億円の予算を使っているそうです。しかし、2021年度に処理された不発弾は約13・3トンで、このペースで進めると、すべての処理に100年以上かかる計算になると山本さんは言います。復帰前の爆発事故1927件死者704人、復帰後も6人が爆発により亡くなったといいます。

 終戦後78年になって戦闘は終っても沖縄現地の戦争は終わっていません。

 太平洋戦争の処理が未だに終ってない日本で、台湾有事を想定した軍備増強の動きを尻押しする日本のメディア。山本さんは日経新聞に異議を述べています。

 「日経新聞は4月15日の解説記事で、『中国の侵攻に伴う台湾有事は、長い危機のごく始まりに過ぎない』」「『少なくとも数年以上、戦時ないしは準戦時状態に置かれてしまう恐れがある。』と指摘、こう主張した。『米国と同盟国は結束し、中国への抑止力を強める。それにより、侵攻は極めて難しいと中国に思わせ続けることが、唯一の最善策だ』」

 山本さんはこの日経新聞の主張を批判しています。

「最近幅をきかせる主張で、一見、説得的だが、軍拡競争は敵対する国同士の不信感を高め、偶発的衝突から戦争に至る場合が多いという国際政治学の基本からすれば、非現実的だ。」

 筆者は日経新聞の意見は最近幅をきかせる主張だという。確かにいま流行りの生成AIに聞けばこの意見が返ってくるでしょう。軍拡を声高に叫ぶ人の理屈の典型です。

 沖縄の施政権返還51年目の沖縄。昨年与那国島に空自のレーダー部隊が配備され電子戦やミサイル部隊の配備計画も進められています。町の人口の2割近くが自衛隊関係者だといいます。

 当初は過疎化対策で自衛隊配備に賛成していた人も、有事の際には標的になるのではないかと不安が高まっています。