[1293](寄稿)医療あれこれ(その87)ー1マイナンバーカードについて

ペンギンドクターより
その1 
皆様
 蒸し暑くなりました。まもなく7月ですから当然かもしれません。
 マイナンバーカードと保険証を一体化(マイナ保険証と略称します)する岸田内閣の政策が不評を買っています。
 ▲開業医、「2024年秋の健康保険証廃止」に反対は7割
 レポート 2023年6月20日(火)配信 橋本佳子(m3.com編集長)
 
 マイナンバー法等改正法が成立、健康保険証は2024年秋に廃止される方針であるのを受け、m3.com意識調査で聞いたところ、開業医と勤務医のいずれも「反対」が最多だった。開業医では52.1%で半数を超え、「賛成だが、2024年秋より遅く」は17.9%、この意見を合わせると「2024年秋の廃止」には7割が否定的な意見だった。
 勤務医では、開業医よりは賛成意見が多かったものの、「賛成だが、2024年秋より遅く」19.9%、「反対」36.2%で、合計で半数を超えた。
 マイナンバーカードの医師の取得率は約8割に上ったが、「マイナ保険証」の保有率は5割前後にとどまった。他の職種についても、おおむね同様の傾向だった。
 
 自由意見では、「デジタル化こそこれからの日本社会の効率化が必要なのに、反対するのは馬鹿げている。問題があるから全てに反対というのは、自動車は事故が起きるので全て廃止と言っているのと同じ。より良いものに作り替えながら、進化させていかなければならない」(勤務医)と賛成意見があったものの、各職種から否定的な意見が多数寄せられた。
 ●「資格確認ができないときに、3割負担にするよう政府はコッソリ制度を変更したが、何の担保もない状態でなぜ医療機関が7割の損失を被らないといけないのか?」(開業医)
 ●「なぜ、こうまで急いでいるのか。不利益を被る方々は貧者と高齢者でしょうね」(開業医)
 ●「自分の意思を明確にできない重症心身障害児者がマイナカードを作ることさえ、大変な困難を伴います。めまいがしてきます」(勤務医)
 ●「健康保険証を残して様子を見てから廃止するかどうかを決めるぐらいの度量もないのか」(勤務医)
 ●「通信トラブルや予期せぬエラーが出た場合、保険証番号が全く不明となり、10割もらわないといけない状況になる」(歯科医師
 ●「現行の保険証と同じように自動配布しないと、申請性では無保険者が続出すると思います」(薬剤師)
 ●「人が少ない医療機関では忙しさ倍増です」(その他医療従事者)
 
 ▲私自身はマイナンバーカードの取得はしましたが、マイナ保険証保有はまだです。まもなくやるつもりですが、女房はマ
イナンバーカードも取得していません。デジタル化には賛成であるものの健康保険証の2024年秋での廃止は相当な困難が予想されています。開業医の方の反対には、診察して3割の自己負担をいただいた後に、無資格だった時、残りの7割が未収となってしまうという怖れがありますが、まことにもっともな心配です。国が補償してくれるのか、と言いたくなるのでしょう。
 ただし、NHKの討論番組では野党の反対に対し、私は違和感をもちました。マイナ保険証は絶対やるべきです。ゆくゆくは、患者さんの医療情報が入っている形のカードが望ましい。その第一歩です。初診で診察して、その患者さんを大病院に紹介するときに、電子カルテの情報がそのままカードに組み込めれば、無駄な検査を繰り返さずにすむでしょう。
 上記の反対意見に、「なぜ、こうまで急いでいるのか。不利益を被るのは貧者と高齢者でしょうね」という意見がありましたが、これはまったく逆です。「貧者」および「高齢者」は病気にかかりやすい。だからこそ、自分のカルテを持ち歩く、つまり、自分の医療情報を常に持っていることで、救急病院に受診したとき、すばやい診断・治療が可能になるのです。
 ▲いわゆる「紐付き」の間違いは、マイナンバーカードの取得を急ぎ過ぎた弊害ですが、そもそも「新自由主義」とか何とかで、本来公的な医療・福祉や教育などを「効率化する」と称して「公務員削減」に邁進してきた日本国が原因です。都道府県に丸投げした政府が怪しからんと言っても、厚労省にも個別の作業に専念できる現場の人間はほとんどいないでしょう。言葉を巧みにあやつる人間集団の「医系技官」連中では無理なのです。
 しかし、だからといって、デジタル化を逆戻りさせてはいけません。どうすれば、患者・医師・歯科医師・薬剤師・看護師・福祉関係者・事務職員などとの間でスムースに情報共有ができるか、前向きに考えるしかないのです。人口減少社会ですから、無駄なことに人を割くことは不可能なのですから。
つづく