[1348](寄稿)医療あれこれ(その91)ー2 マイナ保険証

ペンギンドクターより
その2
さて、本日は、今問題になっているマイナ保険証から始めます。
 ●電子カルテ活用へ法案 政府25年に提出方針 マイナ保険証通じ全国共有
 2023年8月17日(木)配信 共同通信
 電子カルテ共有のネットワークの構築は厚生労働省が所管する法人「社会保険診療報酬支払基金」がすすめる。24年度末ごろより一部の医療機関で先行実施。小規模な診療所も遅くとも30年にはおおむね全ての医療機関で実施を目指す。
 ※電子カルテ:2020年時点で病院の57.2% 診療所の49.9%が電子カルテを導入している。電子カルテの形式が異なるのが問題である。これをまとめるのは大変です。将来を見通さず、適当に民間の互換性のない電子カルテ導入に任せた政府の無方針のツケがここにあります。前述した日経新書『国費解剖』の現状と同様です。
 
 ▼わかりやすく言えば、以前から私が言っているように、マイナ保険証に過去の病歴等の電子カルテ内容が取り込まれて、受診した医療機関でただちに過去の医療機関受診歴、薬歴等が判明するというものです。実際に運用された場合、セキュリティ対策が問題になります。本人のものかどうか、対策としては指紋認証や眼の虹彩認証などが必要になるかもしれません。インドでは14億人の国民のうち、10億人が指紋と虹彩認証で個人カードが動いていて、そのカード利用のノウハウをアフリカ諸国へ提供しているというニュースもありました。
 現状では、マイナ保険証問題は、岸田内閣支持率低下の主因であり、河野デジタル担当相の人気低下の主因になっているという報道が飛び交っています。医療機関では、マイナ保険証推進に日本医師会はどちらかといえば反対の声は抑制的ですが、保団連(全国保険医団体連合会)は反対の声が強いと私なりに理解しています。もともと保団連の執行部はどちらかといえば、反体制的です。機関紙はなかなかユニークで面白い。
 第一次安倍内閣が「年金記録問題」をきっかけに崩壊したように、「マイナ保険証」も国民一人一人に関わるわけで、そのミスは極めて身近に感じられます。したがって、導入には今の日本人の考え方が強く反映してくると思われます。岸田内閣としては決して馬鹿に出来ない問題です。しかし、河野にしてもそのへんがよくわかってないのではないか、お坊ちゃん育ちで日本人の気質を理解していない。あの物言いは「傲慢」で河野大臣も安倍元総理とよく似ています。
 しかし、このデジタル化を推進できないとすれば、日本は世界からとり残されてしまうことは明らかです。世の中にはデジタル化など推進しなくていいと考える人もいます。その人が山の中で小さな畑を耕し、犬を連れて獣を捕らえ、自給自足の生活をしているのならその言葉は信用できます。そしていつ人知れず死んでもいい、医療など不要だ、どうせ土に帰るだけだという気持ちの生活ならいいでしょう。そんな生活がそうそう可能だと私は思いません。「ポツンと一軒家」はかつての日本の大家族時代の名残があって、貧乏で食うや食わずの生活だった……などという場面がよく出てきて、懐かしく面白い番組ですが、ひとり暮らしあるいは夫婦二人暮らしも、今ではデジタル社会と直接間接に繋がっているのを無視すべきではありません。
 医療の世界は、これからどんどんデジタル化が進みます。人口減少で、過疎地域の人々を守るとすれば、遠隔医療が絶対的に必要です。遠隔医療にはデジタル化は必須です。大病院と中小病院、診療所の機能分化が必要です。すなわち電子カルテでの情報の共有化です。……
 私は思うのですが、温泉好きの私たちが、最も好ましい温泉地は黒川温泉・城崎温泉など温泉地全体がひとつになって多少の凸凹があっても、共に役割を決めて共同で発展しようという姿勢です。そういう試みは成功するはずです。医療は温泉観光よりはるかに公的で身近なものです。地域の病院・診療所の役割分担を大胆に押し出さないと崩壊します。高齢者が近くに市民病院(老朽化して倒れそうな状況なのに)がなくなると困ると病院統合に反対し、それが選挙の争点になっているのを見ると、情なくなります。……
 
 下記の主張の井上弁護士は、医療の世界では著名な弁護士さんです。出産を保険対象とするという問題も、そう簡単ではないことを教えられました。彼の主張はいつも勉強になります。では今日はこのへんで。(編集者より 井上弁護士の意見は明日紹介します。)
つづく