[1395]ホタテ祭り

 10月8日の日経新聞のコラム「春秋」を読んで感じたことです。近ごろ目にするこのような文章は、世相を映すご追従の「名文」です。後の時代に「こうして日本は戦争の時代に入った」、という説明の文に使われるでしょう。

 上野•御徒町の「ホタテ祭り」を題材にしたコラムです。後半を抜粋します。

······並ぶのを諦めたという高齢の女性が「前の日も来たけど売り切れだった。すごい人気」と驚いていた。▼「食べて応援」が徐々に浸透しているのだろう。原発処理水は2度目の放出が始まった。中国の禁輸は先行きが見えず、水産業の苦境はなお深い。それでも給食に使ったり、百貨店が物産展を開いたり消費の工夫が広がる。ホタテなら1人5〜7粒追加で食べれば、輸出減を補えそうだという。祭りももっとやればいい。▼御徒町ではイベントの趣旨を聞き、列に加わる外国人旅行者の姿もあった。世界中からの観光客が、安全においしく日本の魚介を食べる光景が拡散する。そうなれば、かの国が汚染水などとあおり続ける意味も薄れてこよう。連帯することで発揮できる力もある。私たちが食べる1粒のホタテは、威圧の前に無力ではない。

引用以上

 中国の禁輸で困っている水産業を支えようという素朴な気持で書いているのでしょう。けれども、「かの国が汚染水などとあおり続ける」という表現には、トリチウム水の安全神話を信じている筆者の心情があらわれています。処理水の放出にたいする中国の禁輸措置は前ぶれもなく強行されたわけではなく、十分予想できたことです。それをわかっていて放水を強行したわけです。日本政府がひたすら中国と対抗姿勢を強めれば国家的対立はエスカレートするばかりです。今、反中国のキャンペーンをはり続けるのは危険です。

 多くのメディアは、有機結合型トリチウム内部被曝の危険性にふれもせず、IAEA、政府、東電の発表を鵜呑みにして安全神話を流しつづけています。

 ホタテを食べることで中国の禁輸と戦おうという好戦的な文は対立の火に油を注ぐようなものです。

 放水を停止すべきです。