芳野連合会長が18日岸田首相を官邸に訪ね賃上げのお願いをしました。
なぜ軸足を経営者(経団連)との闘いから政府に頼むことに移すのか、組合員としては危機感を持ちます。
やりとりは朝日新聞デジタルで次のように報じられています。
「面会は芳野氏からの要望で、約10分間行われた。来年の春闘での高水準の賃上げ実現に向けて、芳野氏が『経済社会のステージを変えていく年にしたい』と伝えると、首相は『継続した賃上げが必要だ』と応じたという。」
朝日新聞はさらに次のように言います。
「首相は今月5日に自民党政権下で16年ぶりに連合の定期大会に出席した。それに先立ち連合傘下の産業別労働組合(産別)である『電機連合』の組織内議員だった、国民民主前参院議員の矢田稚子氏を賃金・雇用担当の首相補佐官に起用するなど、連合との距離を縮めている。」
これは連合にたいする朝日の記者なりの危惧の一表現と言っていいと思います。自民党は今年はじめの党大会で「連合並びに有効的な労働組合との政策懇談を積極的に進める」と明記し連合の支持基盤の掘り崩しを目論みました。そして3月には麻生自民党副総裁が連合•芳野会長ら幹部と会食を行い政労接近を演出しました。連合内で一連の芳野会長の行動に批判が出たことにたいして自民党側は矢田氏の補佐官起用をもって連合内の「対立」に揺さぶりをかけていると思われます。
朝日の記者は「こうした点について芳野氏は『労働組合として社会的な対話が必要だということで、政府代表と経営者代表には案内状を出している。距離感は今まで通りだ』と述べた。」(川辺真改)とまとめています。
賃金闘争に関しても闘いを政労使トップ交渉にきり縮め賃上げを政府の力に委ねるという形の運動スタイルを来春闘でも続けるということです。
賃金闘争は下から労働者の力で
いわば上からの政策で経営者に賃上げを指示すれば、多くの経営者はお上の言うことを聞くでしょう。ですが労働者の力で勝ちとったわけではないので、労働組合に気を使うことなく企業経営者は帳尻合わせをするかのように賃金コストの上昇分を下請け業者にしわ寄せしたり商品を値上げすることによってさっさととり戻します。
前者に関して言えば、下請け会社への委託単価切り下げや請負契約を打ち切って内製化します。そして自企業労働者の労働強化によって生産性を向上させコストアップを吸収しようとします。
物価値上げはわずかな賃上げしかない中小企業労働者や年金生活者にとって生活費危機をもたらします。
連合指導部は経営者ののりきり方への危機感は皆無です。賃上げは労働者の団結によって勝ちとらなければ経営者は弱いところに犠牲を転嫁します。
以下、参考に矢田問題の連合見解を紹介します。
2023年09月28日
矢田稚子前参議院議員の総理大臣補佐官就任について
日本労働組合総連合会
9月15日に矢田稚子前参議院議員が内閣総理大臣補佐官に就任した。本件については、矢田氏が出身の電機連合ならびに政党の役職を退任した後に、政府から所属の会社を通じて就任要請がなされた旨、当該構成組織から報告があったところである。
そのような中にあっても連合は、これまで同様、連合として組織決定している方針や政策にもとづき、その実現に向けて毅然とした態度で政府に対応していく。
また、連合は「働く者・生活者を優先する政治・政策の実現」「与野党が互いに政策で切磋琢磨する政治体制の確立に向けた、政権交代可能な二大政党的体制」をめざしている。本件に関しては一部で憶測による報道も見られるが、連合は引き続き、「連合出身議員政治懇談会」を軸に据え、連合フォーラム議員との連携をより深めながら、すべての連合構成組織ならびに地方連合会とともに「働くことを軸とする安心社会~まもる・つなぐ・創り出す~」の実現に向けて取り組む。
以 上
矢田氏の補佐官起用についての否定感はありません。