[1464]バイデンのウクライナ「ハリネズミ」化戦略

 

 12/17(日)のWedgeONLINEに、バイデンのハリネズミ戦略についての2022年1月の論説が紹介されています。

 2022年1月26日のワシントンポストに掲載された論説はバイデンの対ウクライナ戦略に関するコラムニストの分析です。

 この論説はプーチンウクライナ侵攻の前に書かれたものです。その後のウクライナ戦争の過程はバイデン政権のゼレンスキー政権にたいする政治経済的軍事的支援という形での介入の過程でした。私はウクライナ社会主義者グループの反プーチンの戦いを支持するものですが、同時に彼らがゼレンスキーのNATO加盟の動きに反対する公然・非公然の活動を展開しているかどうかが重要だと思います。

 ウクライナ軍の反攻は総体としてアメリカのウクライナ戦略に組み込まれたものだということは明らかです。

 ウクライナ労働者階級は大きな犠牲を強いられています。領土防衛の旗印のもとで何十万人の死傷者を出し、いまも尚戦場に兵士がとどまっています。ロシア軍兵士も多くの犠牲を出しています。ロシア資本家階級の利益とアメリカ・ウクライナ資本家階級の階級的利益を守るための戦争は即刻停止すべきだと私は思います。ウクライナ労働者階級はゼレンスキー政権に戦争を止めさせ、労働運動のたたかう態勢をたてなおす時ではないでしょうか。ロシアの労働者階級はプーチンの大統領再選を阻止しウクライナから軍をともかく撤退させるべきです。

 以下、バイデンのハリネズミ戦略を見てみます。当然ですがワシントンポストのコラムニストのデビッド・イグネイシャスはアメリカの利害を代弁する立場にたって意見を書いています。この論説はウクライナを支援するアメリカの意図目的を読むために検討に値すると思います。

WedgeONLINE12/17(日)

世界潮流を読む 

岡崎研究所評論集

バイデンが持つウクライナ〝泥沼化〟戦略

岡崎研究所 2022/01/26

 ワシントン・ポスト紙コラムニストのデビッド・イグネイシャスが、1月6日付け同紙に、バイデン政権はウクライナをロシア軍に攻め込まれてもこれに頑強に抵抗するハリネズミのような国にすることを検討しているとの論説(‘Biden wants to turn Ukraine into a porcupine’)を書いている。 Alfadanz / sldesign78 / iStock / Getty Images Plus

 要点を一部抜粋して紹介すると次の通りである。

「ロシア軍が国境線を越えれば、米国と北大西洋条約機構NATO)の同盟国は長期の抵抗戦のための兵器と訓練を提供する。米国と同盟国は、訓練とスティンガー防空ミサイルを含む兵器をもってウクライナの反乱を支援する方法を考え始めている。ランド研究所のアナリストによれば、そのような反乱を抑え込むためには、ウクライナ人1000人に対してロシアの戦闘員20人を要する。だとすれば、ロシアは88万6000人の占領軍を必要とする計算になる。明らかに非現実的であり、反乱を鎮圧するのは困難だ」 「ウクライナの抵抗能力を強めるために、最近になって、米国とNATOは防空、ロジスティックス、通信、その他の枢要な部分の調査のためのチームを派遣した。米国はロシアのサイバー攻撃と電子戦争に対するウクライナの防衛能力の梃入れもしたようだ」 敵に侵攻を断念させるため抑止を働かせることが望ましいが、米国と欧州にはウクライナの防衛のために欧州を戦場としてロシアと戦う意思がない。そうであれば、ロシアが一旦国境を越えれば、これに抵抗するウクライナの反乱闘争を武器の提供をもって支援し、泥沼に足を取られるロシアに最大のコストを払わせることをもって戦略とせざるを得ないであろう。厳しい経済制裁だけでは抑止として不十分だと思われるので、この戦略を加えて抑止とすることが重要と考えられる。

 筆者のイグネイシャスは政権の内部情報に通じた人物であるので、論説に書かれているウクライナハリネズミとする戦略が米国とNATOで検討されていることは事実であろう。

 もし、1月から始まった一連のロシアとの協議を通じて、ロシアがディエスカレーションに関心がなく、協議を侵攻のための口実作りに利用しているに過ぎないことが明らかになる場合には、米国とNATOは防御兵器だけでなく殺傷兵器を含む武器供与に踏み切るべきであろう。ウクライナ軍のための訓練チームを派遣し駐留させることも検討に値しよう。 NATOとロシアの政治的合意も形骸化 イグネイシャスは上記論説で、侵攻があれば、NATOは兵を前方に動かすことを議論している、とも書いている。

 その具体的な内容は分からないが、もはや、1997年5月のNATO・ロシア議定書の規制に縛られる必要はない。 この議定書はNATOの東方への拡大が議論されていた当時、ロシアを慰撫し、ロシアとの関係を維持するために作成された政治的合意(法的拘束力はない)であるが、その中でNATOは旧共産圏諸国への実質的戦闘部隊の常駐を控えるとの自己規制を表明している。それゆえに、NATOは、バルト三国ポーランドへの部隊の派遣はローテーションによることとしてきた。

 しかし、この規制は「現在および予見し得る安全保障環境」と「ロシアが同様の抑制を行使する」ことを前提とすることが議定書に記述されている。ロシアのクリミアの奪取とウクライナ東部への干渉、更には昨年来のウクライナ国境における軍事的威圧に鑑みれば、規制は死文化していると言うべきであろう。 恐らく、プーチンはバイデンの精神的強固さを試している。バイデンには確固たる対応が求められる。それは単にロシアとの関係における問題ではない。バイデンが軟弱であるとの印象を中国に与えるような行動を取れば、中国が自身の行動に対する米国の出方を推し量る計算に重大な影響を与えるであろう。

以上

 ロシアのウクライナ侵攻直前のバイデン政権の構えがリアルに書かれています。