[509]改憲賛成が増えたのは なぜ?

f:id:new-corona-kiki:20210505070753j:plain
憲法74年目

 憲法改定についての世論調査は新聞社によってばらつきはあるものの、従来よりも改憲賛成が増えました。
 コロナ対策に失敗し、緊急事態宣言という強権発動に賭けた政府が、国民の意識を変えつつあるのだと私は感じます。
 新型コロナウイルスは不気味な「粘り強さ」を発揮しています。みんな不安感が深まり疲れてきています。テレビでは毎日毎日感染者数のグラフがうつされ菅首相小池都知事は「巣ごもり」が国民の義務であるかのようにくり返し訴えています。個人の感染からの「防衛義務」と「自己責任」論が社会的規範のようになり、そこから外れた行動をとるものは白眼視、非難されます。休日、街角や行楽地のインタビューを見ると、ほとんどの人が自分が出かけていることの弁明をしています。

 私は5月3日の国会前憲法集会のライブ中継を見ました。世論調査の結果にコメントした発言はなかったと思います。
 どうして改憲賛成が増えたのだろうか、考えてみます。

・読売新聞は「憲法改正『賛成』上昇56%、緊急事態対応『明記を』6割」と見出しで伝えています。「覇権主義的な動きを強める中国への警戒感が、憲法改正の機運を押し上げた可能性がある」コメントしています。「大災害や感染症の拡大など緊急事態における政府の責務や権限のあり方について、憲法を改正して条文に明記することを支持する人も59%と半数を超えた」といっています。

毎日新聞の調査では憲法改正について「賛成」が48%と「反対」の31%を上回り、9条を改正して自衛隊の存在を明記することに「賛成」は51%で「反対」の30%を上回ったと報道しています。9条に関しては「自衛隊の明記」の是非を問うたようです。

朝日新聞は一面見出しでは「改憲『必要』45%、『必要ない』41%」「9条『変えない』61%」というように改憲の賛否の数字を紹介するにとどめています。しかし2013年以降では改憲の賛否の差は最も小さくなっているとのこと。9条にかんしては条文を示して賛否を聞いたといっています。緊急事態条項は「改憲せず対応」が54%となっていますが、「憲法を変えて対応する」が増加しています。「個人の自由と権利が制約されても、感染の抑制を優先するべきか、それとも、感染が拡大する恐れがあっても、個人の自由と権利を優先するべきか、と問うたところ前者が83%、後者が10%だったそうです。私はこの時期に答を誘導するような聞かれ方をされてよく10%のひとが「個人の自由」を優先すると答えたなと感心しています。

 当ブログ『新型コロナ危機のなかで』の編集部は4月26日「[500]緊急事態宣言について」の号で「東京では『灯火管制』にひとしい声が上から発せられました。社会全体が一方方向をむきはじめています。危ない風調です。同調しないひとは『非国民』にされかねません。」と危機感を伝えました。

 そして憲法改悪の動きに警戒を呼びかけました。[500]から引用します。

「この時期にデジタル法案(国民監視の強化)は衆院を通過し、改憲国民投票法の改定案が採決にもちこまれようとしています。

 蔓延防止等重点措置は平時でも政府の罰則つきの強制措置を可能にし、国民を措置に慣らせていくという含みがあるのだと思います。憲法改定案の緊急事態条項の先取りと見なしていいと思います。」

 緊急事態法について5月3日の日経新聞がわかりやすい解説を書いています。

 「全体の利益優先  同条項は『国家緊急権』の思想に基づく。災害や戦争で国家の存立が脅かされた場合、全体の利益のため個人の権利を抑制できるようにする。現行憲法に明確な規定はなく、新型コロナ拡大で機運が醸成されてきた。」「日本では米欧で実施される都市封鎖(ロックダウン)などと異なり、行政の強制力や罰則を抑制しながら感染対策に取り組んできた。・・・かつてハンセン病の患者を強制的に隔離したり、戦前の軍国主義のもとで思想の自由等個人の権利を制限してきた反省がある。」

 菅政権は、コロナ危機下のこんにち感染症を抑えるということを名目として国民の気持の変化にのっかって緊急事態条項を改憲の中におしこもうとしているのは明らかです。日本政府のコロナ対策の失敗による感染の広がりで、労働者、自営業者とその家族、学生は貧窮と罹患の不安に苦しみ先が見えない混沌のなかにいます。労働組合も野党も困窮する労働者階級の信頼を得るような闘いがなしえていないから、改憲すれば少しは現状が変わるかもしれないという「期待」感が生まれているのではないでしょうか。
 憲法改悪は日本が戦争のできる国になっていくかどうかの分水嶺となります。改悪されたら戦争政策に反対することが憲法に背反することになるのです。職場・地域から改憲反対の声を上げていきましょう。
編集部