[567]中国深圳で賃金抑制へ

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中国深圳で賃金抑制がはじまった

 深圳市当局が17年ぶりに賃金抑制にのりだしました。市人民代表大会(市議会)で2021年5月から給与条例が審議されています。条例改定の柱は非正規労働者にたいする残業割増し金のカットです。春節など法廷祝日の割増し(平日の3倍)を定めている「3倍規定」を削除し平日と同じ水準に引き下げるというものです。二つ目はボーナスのカットです。非正規の労働者には働いた月数に応じてボーナスを年末に支給しています。これを撤廃するというものです。

 中国は労働者の賃金を抑え、「世界の工場」の地位を築いてきましたが、近年はより低賃金のタイ、マレーシア、ベトナムなどの東南アジアの国々に国内の工場が移転し、価格競争にさらされた外資系もふくめ中国国内の企業の経営は悪化しているのです。それに新型コロナ危機で原材料価格が高騰し中国の企業にも影響を及ぼしています。


中国習近平政権の賃金抑制へのターニングポイント
中国共産党100周年記念の習近平演説ーー「小康社会を全面的に実現した」


 習近平主席は約1時間にわたる演演の中で「中華民族の偉大な復興」という言葉を繰り返し述べた上、共産党の統治があったからこそ中国が発展できたと強調しました。そして「中国の大地に全面的な小康(ややゆとりのある)社会を建設し、歴史的な貧困問題を解決した」と宣言しました。

 習近平政権の指示なくして深圳人民代表大会が賃金条例改定に踏みだすことはないでしょう。深圳は経済特区に指定されており中国の市場経済のフロンティア地区なのです。賃金抑制をまず深圳で実施することを突破口として中国全土に波及させようとしていると思われます。

 習近平の演説した「小康社会の実現」は中国共産党100年の成果をおしだすとともに「小康社会を実現」したのだからひとまず前進だ、これからは国際競争にうちかつために賃金を抑制するから労働者は受け入れよ、というわけなのでしょう。


非正規労働者からはじまる賃金抑制の波


 中国政府も他の資本主義国と同様に非正規という雇用形態をつくっています。その動機は賃金コストの削減であり、経営悪化の際、解雇というかたちではなく、契約解除によって人員削減をしたいということです。  
 日本の非正規雇用は、既成労働運動の指導部の協力のもとで資本家、経営者が採用するにいたっている雇用形態です。賃金抑制によって危機をのりきる、しかもそれを非正規労働者からはじめるというのは「普通の」資本家の発想です。資本家的経営の方程式のイロハです。それは「共産党」がやるべきことではないと思います。
 創立100年の中国共産党は、中国型「社会主義国家」建設のジッグザッグを経て、いまや資本家階級の政治的代表部として専制的に君臨する党になりました。労働者農民の代表部としてのためらいも苦悩もとっくの昔に抛擲したのでしょう。
 とくに「社会主義市場経済」という二律背反のカテゴリーをもって資本主義化の道を理論的に正当化しはじめたときが転回点だったのではないかと思います。

 賃金抑制攻撃をうける中国の労働者は必ず反対の闘いにたちあがるでしょう。
日本の労働組合も連帯しましょう。