[267]世界を覆う感染の波

「経済と感染防止」のジレンマに悩む世界の国々の政府
現代資本主義の限界があらわに
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ブログ管理人です。読者のみなさんこんにちは。
新型コロナ感染が拡大しています。政府のGoTo策は拡大を助長していると思います。なんとかして止めなければなりません。
わたしの意見を書きました。読んでください。


11月24日の朝日新聞2面の見出しを読むと暗い気持ちになります。

「欧州ロックダウン 貧困の波」

「非正規直撃 職探しの外出、不許可」

「食料配布 増え続ける利用」

 新型コロナ感染症の広がりで欧州各国はロックダウンに踏みきっています。その代償が非正規労働者の失業であり、貧困の波です。

朝日新聞によれば、パリでは生活が困難になった親向けの支援物資をうけとって生活をしのいでいる人が4千人にのぼるという。食料やおむつ等の配布場所で二人の子の父親(42)が記者のインタビューを受けています。彼は非正規で建築現場や食糧倉庫の在庫管理で毎月8百ユーロ(約9万8千円)を稼いでいたが、今月上旬に失職しました。

フランスでは10月30日にロックダウンが始まり、食料品の買い出しなどをのぞいて外出が禁止されています。違反すると罰金135ユーロ(約1万7千円)が課されます。雇い止めされた非正規労働者は職探しのために街に出ることもはばかられるといいます。彼が家族4人で暮らすアパートの家賃は月656ユーロ(約8万1千円)で3ヶ月滞納しています。食費を切りつめ、肉を食べるのは週一回だけ。「コロナでどれだけ人が簡単に弱い立場に追い込まれるか、かみしめている」とインタビュアーに語っています。

配給所で彼の隣に並んでいた二人の子供の母親(19)は、パリから80キロ離れた郊外に490ユーロ(約6万円)のアパートで母子3人で暮らし、家賃を一年以上滞納しているといいます。お金がなく無賃乗車して配給所に来たそうです。地元の保育所は満員で週一日しか受け入れてくれない。子育てに忙しく、コロナ感染症が広がるなか、外で人と会うこともできない。「私は誰からも孤立している」と語っています。

この二つの家族の困窮に端的にしめされているような状況は、今や全世界的に広がっています。世界の労働者階級が八方ふさがりの生活に落としこめられています。


「コロナのわざわい」とはいえない


「コロナ禍」という言葉が使われています。新型コロナウィルスがヒトの体に入ることによって健康に悪い影響が出るのは確かなことです。これは自然現象と言っていいでしょう。
しかし通勤電車や会社で感染するのは社会的な要因によるものなのです。資本制生産様式が行われる社会は労働者が労働して商品を生産し商品を経営者が売らないかぎり会社の利益は出せないのです。労働者は決められた賃金と引き換えに労働力を売らなければ生きられません。労働力を売った賃金労働者は資本家の指揮監督のもとで労働しなければなりません。商品の生産現場にいやでも通勤しなければならないのです。

解雇や雇い止め、賃金の抑制などによって労働者が生活苦に陥るのは自然現象ではないのです。資本家・経営者が自分を守るために労働者に犠牲を強いることによってそれは生起するのです。
コロナ禍という言葉はこれらのことをすべて「わざわい」としているのです。


資本主義社会では「経済と感染対策」の両立は無理


一切の利益を度外視して、コロナに罹った人や罹ったかもしれないと思うひとすべて受け入れて検査し、診断、治療する・スタッフの労働条件が保障された医療施設がつくれるなら感染は広がりません。感染症はヒトの社会で撲滅することはできません。ウィルスは変異して存在し続けるからです。常に感染症に対応する医療施設をつくっておくことができる社会をつくらなければなりません。儲けることが絶対的目的とされる資本主義社会でそれを実現するのは本質的に不可能です。儲けを生みださない施設は存立できないのです。自己増殖しない資本は資本たりえないのです。

壁は厚く根が深いのですが、労働組合や職場・地域から声を上げ、政府に逼迫する医療の現状を改善することを強く要求し実現しなければ、早晩、医療機関は対応不能に陥ります。

いまの新型コロナ感染症の猛威と政府の対応は私たちに社会のあり方と変革を考えさせているのではないでしょうか。朝日新聞のインタビューにあった父親の「コロナでどれだけ人が簡単に弱い立場に追い込まれるか、かみしめている」という述懐は心にしみます。
コロナ感染症にたいする政府・資本家の対応は現代資本主義社会の根底にある固有の矛盾をむき出しにしました。たんに「わざわい」というわけにはいかないと思います。犠牲になるのは労働者であり貧困層です。資本家は市場にあふれたコロナ対策マネーによって高騰する株価の恩恵に浴し、ますます肥え太っていきます。その富は根本的には労働者の労働が生みだす価値の現われに他ならないのです。


感染の広がりを防ぐことが最優先、働くわれわれは生活を守るために団結を


いまどの国の政府も経済と感染対策のジレンマに陥っています。資本主義であるかぎりこの二律背反的矛盾から自由にはなれません。日本の菅政権もGoToトラベル・GoToイートキャンペーンによる景気回復を試みたものの、感染第三波に弾みをつけてしまい、医療体制が破綻に向かっています。
GoToによる観光業をはじめとしたサービス業の景気回復を通じて経済危機からの脱出を試みた政権は、自分が蒔いた種によって急速に感染拡大したことに責任が問われることをおそれはじめました。医療施設、スタッフのうけいれ能力が限界に達し施設の機能が停止して患者が路頭に迷うことになってしまったら、自らのコロナ対策の責任が問われるだけではなく、社会的危機を招来するのです。民衆の抗議の声が高まるでしょう。

医療崩壊」のもたらす社会的影響ははかりしれないものがあるのです。政府は経済活動を凍結し生産・流通活動の遂行が滞ることになるのです。企業倒産やリストラで労働者は失業させられ、貧困は広がることになり物は売れずそれがまた不景気の要因となり賃金は抑えられるといった負のスパイラルとなるのです。
いま菅政権が進めているGoToは、労働者の命を犠牲にしても資本家の利益を守り生きのびさせたいということなのだと思います。

これにたいして反対運動はどうなっているのでしょうか。労働組合はあっても産業報国会のようなものになってしまい、運動は火が消えたようになっています。
私たちは「経済か感染対策か」で右往左往し、ますます病を広げる政府にたいして抗議の声を上げていかなければなりません。
野党にげたを預けてもこの難局は突破できません。労働者の団結を再構築しなければなりません。