器ならず
09/10 05:00
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論語の中に「君子は器ならず」とある。人の上に立つ者は、器(道具)のように特定の用途だけに役立つのではなく、幅広く能力を発揮する必要があるとの教えが込められている▼渋沢栄一は、論語を人生の指針にした。生来、社交的だった渋沢は、人一倍人脈づくりにたけ、日本経済の礎となる企業を次々と起こしたが、苦手な人物が少なからずいた▼その一人が明治政府の財政改革などを巡って意見が対立した大久保利通である。渋沢は実体験を語った談話筆記「実験論語処世談」で、虫の好かぬ嫌いな人と切った▼ただ「公の達識には驚かざるを得なかった」「器ならずとは、公のごとき人を言うのだろう」とも評した。大久保の人間としての底知れなさに畏怖と嫌悪感を抱きつつ、政治家としての才には気づいていた▼明治の元勲に比べると、今の政治家は心もとない。退陣する意向を先週表明した菅義偉首相が緊急事態宣言の延長決定に合わせ、ようやく記者会見に臨んだ。退陣に至る真相はけむに巻く一方、病床逼迫(ひっぱく)のさなかに、宣言下の行動制限を条件付きで緩和する方針を決めたのには驚いた。またもブレーキとアクセルを同時に踏むような対応ではないのか▼「器ならず」にはさまざまな道具を使いこなす人、ひいては徳を修めた人こそ君子たるべきとの教えもあるという。新首相には多くの国民が得心できる政策を進めてほしい。2021・9・10(北海道新聞「卓上四季」デジタルより)
◆◆◆ 真田幸村のコメント:
●菅首相の退陣は遅きに失し、さらに、またアクセルとブレーキを同時に踏むというおまけまでついていた。宰相の器ではないことは、最初の「学術会議任命拒否」問題が生じた時点から明らかでした。すなわち「公の達識」がないことがバレてしまっていました。コロナ対策に関しても、無理やりな「Go To キャンペーン」を無理押しし、その「器にあらず」をむき出しにしました。首相からの「引退」会見において「コロナ対策に専念したいから」と「意味不明」なことを平然と公言しました。これらのことがこのコラムによって、さらに強調されています。★「器にあらず」は、誰しもが時々(過度ではなく)少しは自身を振り返ってみる必要があるかもしてません。★残ったものは「自民党」の「跡目争い・政争」であって、「正しいコロナ対策」ではないことが歴然としています。総裁選はマスコミとしては「面白い」かもしれませんが、ひそかに自宅で亡くなった方たちのことは「コロナ死」の数に入れられていないことについても、今からでもコロナ対策のかなめとして大問題にしてほしいものです。感染者数が一時的に減少している数字だけで「安心」していい時期ではないことは、既知のことだと思いますので…