[862]アマゾン労働組合がつくられたのはなぜ


 このブログの[853]でアマゾン労働組合について書きましたが、続きです。
 新型コロナ感染症が広がる中で、労働力不足になったアマゾンは従業員の転職や早期退職を防ぐために、賃上げや福利厚生の充実を打ち出しました。しかし、こうした待遇の改善ではアマゾン従業員の労働組合への組織化を目指す闘いをとどめることはできませんでした。組合派が求めているのは休憩体制の改善であり、アマゾンの倉庫で事故が多発している原因として批判を受けてきた厳しいノルマ労働を見直すことだからです。
 アラバマ州ベッセマーの倉庫では、過酷な労働ペースと十分な休憩時間がないことへの不満が従業員の間で高まり、2020年から組合の結成が検討され始めました。また、休憩室がトイレから遠い場所に配置されているため、従業員が休憩時間のほとんどをトイレへの移動に費やさなければならなりませんでした。
 アマゾンを相手取った複数の訴訟が起こされました。先日はワシントン州の規制当局が、アマゾンの課す厳しいノルマが従業員の間で筋骨格障害が多発する直接的な原因になっていると指摘しました。
 
 一方、スタテン島の倉庫では2020年初頭に従業員が新型コロナウイルス感染症対策の強化を会社に要求しました。当時は感染症の拡大によって倉庫で働く労働者が不足し、サプライチェーンも混乱していました。危機に立ったアマゾン資本・経営者はストライキを計画した従業員を解雇したり、懲戒処分を課したりしたため、従業員はALU(Amazon Labor Union )を設立しました。このALUが核となってスタテン島の倉庫職場全体に組合の組織化を広げていったのです。
 (CNET JAPAN参照)

世界の労働者は団結を!

 今アマゾン倉庫 の労働現場で起きていることは、資本制生産過程では必然的に発生します。商品=労働市場で労働力を購入した資本家は、生産過程で可能な限り労働力の使用価値をを効率的に使おうとします。商品となる一定量の生産物をできるだけ短時間で生産することを追求します。資本家は労働者を生産性向上のかけ声のもとで休みなく働かせる衝動に駆られるのです。仕事の量は同じで人員は削減され、残った労働者の労働の密度は極限まで濃化されるのです。アマゾンの倉庫で働く労働者も言っていますが、AIロボットが生産過程に導入されてもそれを使いこなす技術的労働は不可欠であり、また技能的労働は残ります。労働過程の労働のちょっとした工夫とあんばい、カンとコツの必要性は消えないのです。AIロボットはどんなに労働者に似せて創られたものであっても労働過程で労働主体となることはありません。労働手段となるものに他なりません。労働手段とは「労働者が自分と労働対象との間に差し入れてこの対象に対する彼の活動の伝導体として彼のために役立つような、一つの物、または諸物の一複合体です。」(『資本論』第五章 労働過程と価値増殖)
 資本家による生産性向上の飽くなき追求は資本主義の現代社会ではどこまでもつきまといます。休憩時間の要求が出ているということは休みも与えられないで働かされているという現実があるということを意味しています。
 アメリカ、日本はもちろん、ロシアでも中国でも、そしてウクライナでも同じことが行われているのです。資本家が手にする利潤は、その使用価値の消費が価値増殖の源泉となる・労働力商品の消費によってもたらされるのです。剰余価値の量は労働生産性によって決まるといえます。
 資本主義経済社会は弱肉強食の「自由」が保障されている社会です。新型コロナ危機のなかで資本家は生き残り競争に打ち勝つために労働の生産性向上に血眼になっています。国家間戦争は資本家階級の利害対立の暴力的解決の形に他なりません。そこで労働者階級が犠牲にされるのです。
 ウクライナ戦争は、直接的にはウクライナNATO加盟をロシア資本主義国家の死活問題としてとらえるプーチンによって、西側への挑戦的な形で引き起こされました。ウクライナ資本家階級の利害を代弁するゼレンスキーは労働法改悪など労働者に対する攻撃をかけて支持率が下がり危機に直面していたのです。いまプーチンの越境侵略と、アメリカに支援されたゼレンスキー政権の対ロシア戦争は、多くの労働者人民の血の犠牲を出しながらなお継続されています。
 今やアメリカは軍産複合体の兵器生産に活気をつくり出すことに成功しています。
 ウクライナの労働者はロシアの労働者とともにこの戦争の階級性を見抜き、労働者の命とその家族を犠牲にして延命しようとする自国政府に戦争をやめさせなければなりません。

 戦争と搾取と収奪に苦しむ世界の労働者の団結が21世紀の暗黒の時代を超克する可能根拠だと思います。