[866]“無効とされた解雇の金銭解決制度” 厚労省 検討会が報告書まとめる


 厚生労働省は2021年11月、新型コロナウイルス感染拡大の影響で解雇や雇い止めにあった労働者が、2020年2月からの累計で12万99人(9日時点、見込みを含む)になったと明らかにしました。女性の失業期間が長期化する傾向が出ています。
 また、厚労省労働力調査によれば感染症が広がった2020年度の完全失業者は前年から36万人増加しました。新型コロナパンデミックによって直接的間接的にこれだけの労働者が職を失ったのです。これは政府の発表分だけです。完全失業者とはハローワークに行って求職活動をしている人の数です。仕事をさがすことを諦めた人は数に入っていません。
 新型コロナ危機のなかで窮迫した資本家・経営者は労働者の解雇・雇い止めをもって危機の乗りきりを図ったのです。
 新型コロナ危機以前から、非正規雇用の労働者の雇い止めや正規雇用の解雇が頻発し、労働審判や裁判で雇い止め・解雇無効の判例がありました。

解雇の金銭的解決制度

 政府は、解雇無効判決が出され職場復帰を求める労働者にたいして経営者が金銭解決を可能にする制度を検討しはじめました。
 4月11日厚生労働省の検討会は「申し立てをできるのは労働者に限定する」という報告書をまとめました。これは解雇無効判決によって雇用契約が生きている状況下であっても、職場復帰の道を狭め解雇→金銭的解決のコースを制度的に認めることを前提としています。今後は労使の代表などでつくる審議会で制度を導入すべきかも含めて議論が行われますが、どのような条件をつけるにせよ、労働者の解雇撤回闘争は金銭解決の土俵の上にのせられることになります。
 解雇されると職場復帰は困難になってしまうのが現状です。11日の厚労省の報告書では、労働者に支払われる「労働契約解消金」の算定は、それまでの給与額を基本としたうえで、年齢や勤続年数、再就職までの期間などを考慮するとしています。けれども解雇の金銭的解決が制度的に認められると金銭による解決が当たり前のように固定化されることになります。

 制度の導入について「日本労働弁護団」などから「働く人が解雇されやすくなり雇用が不安定となるおそれがあるほか、解雇規制の緩和につながる」と反対の意見が出ています。
 私は労働組合員として、解雇の金銭的解決制度を前提とした審議会議論には反対です。