[1007]ザポリージャ原発の危機

 ザポリージャ原発は11日に停止しました。IAEAグロッシ事務局長は、「砲撃が続く限り、危険な状況に変わりはない」と危惧し「深刻な懸念」を表明したと報道されています。

 グロッシ氏は砲撃を停止してほしいと言っていますが、要請先は明らかにしていません。日本のメディアはロシア軍が砲撃しているというように伝えているところが多いです。

 しかしそれは定かではありません。いずれにせよ冷却電源が破壊されると核燃料がメルトダウンしてしまいます。ザポリージャ原発は今、ウクライナ戦争の具にされています。

 以下日刊IWJの記事を紹介します。

 

ザポリージャ原発(ZNPP)の完全停止という最新ニュースを取り上げました。ニュースの詳細については、日刊IWJガイド9月12日号をお読みください。

 2月24日にウクライナ侵攻していたロシア軍はすぐに、ウクライナ国内の原発を制圧しました。現在にいたるまで、ロシア軍は欧州最大の原発であるザポリージャ原発を占拠し続けています。 ザポリージャ原発をめぐっては、「ロシア軍の砲撃が続いている」というウクライナ側の主張と、「ウクライナ軍が砲撃している」というロシア側の主張が真っ向から対立しています。

 8月23日の国連安保理事会で、ロシアのネベンジャ大使が強くウクライナ軍の仕業だと批判しましたが、IAEAの報告でも、攻撃主体は明示されませんでした。  

 ザポリージャ原発の周辺は、年間を通して東西南北の風が吹いています。仮に砲撃によって、チェルノブイリ級のシビア・アクシデントが起これば、ウクライナの領土の半分は汚染される可能性があります。仮に、西から風が吹いていれば、東部ドンバス地域一帯が汚染される可能性があり、北から風が吹いていれば、クリミア半島アドリア海黒海が汚染されます。

  岩上安身は「戦争で原発への意図的な武力攻撃、これは人類史上初の危機ではないか」と述べました。岩上は攻撃主体についても、ロシア軍が占拠しているザポリージャ原発に、ロシア軍が攻撃をかけるというのは、論理的に理解不能だと指摘しました。 岩上は、元CIA分析官のレイモンド・マクガバン氏が、IAEAが、ウクライナ原発攻撃していると報告できないのは、「国連に対する米国の影響力」が原因だと述べているという『TASS』のニュースを紹介しました。 こちらは本日の日刊ガイドでも詳しくご紹介しています。ぜひあわせてお読みください。 ※Экс-аналитик ЦРУ: МАГАТЭ не заявляет об обстрелах ЗАЭС Киевом из-за влияния США на ООН(元CIAアナリスト: IAEAは、米国が国連に影響を与えているため、キエフザポリージャNPPへの砲撃を主張していない)(TASS、2022年9月11日) 

 岩上「原発への攻撃というのは『あり得ない』んだと。日本でも福島第一原発の事故以来、戦争を遂行する方向に行こうとする日本が、原発をそのままにしているという状況がおかしいと思い、原子力規制委員会にも、経産省にも、防衛省にも、ありとあらゆる形で問いかけ続けてきたんですけど、この『原発×戦争』というリスクは誰一人考えていない。 僕が約10年間にわたって、僕だけじゃなくてIWJのメンバーが、ありとあらゆる機会に問いかけてきても、原発を防護しない。防護している様子がないわけです。 それなのに、(岸田総理は新しい原発の)増設とかを考えているわけですよね。 でも、(原発への武力攻撃は)もう起きてるわけです、現実に。ドカンドカンと砲撃が来て、メルトダウンが起こるまで、黙っているつもりなのか、わからないですけれども。真剣な関心も足りないし。チェルノブイリ原発の事故が起きた時には、日本まで放射性物質が飛んできたと、真剣に言っていたんですが。 このニュース、どのように御覧になりますか?」

須川氏「真相は藪の中、といえば藪の中なんですが、常識的に考えると、ロシアが(ザポリージャ原発への砲撃を)やる理由は、なかなか見出しにくいですね。 メルトダウンまで追い込むのであれば、逆に、今、ロシア語話者の住民のところが被害の中心になるという(可能性がある)。 仮に電力をウクライナの中でその供給をさせないということが目的なんだとしたら、今、ザポリージャ原発を押さえてるのはロシア側なわけですから、わざわざ砲撃を加えなくてもできそうな気もしますしね。  一方、(砲撃をしているのが)ウクライナ側であっても、常識的に考えると、ウクライナ政府側がウクライナ人に対する放射能被害を人質に取るような形で、そんな北朝鮮のような瀬戸際戦術をやっているというのも、にわかには信じがたい話ではあるんですけれども。 だけど、誰かが(原発砲撃を)やってるってことですよね」

 

 須川氏は、日本のメディアも、少なくとも攻撃をしているのが、ロシア側、ウクライナ側の両方ありうるということくらいは報道すべきだと指摘しました。2月の侵攻以来、日本のメディアの報道が「ロシアだけが悪い」という「洗脳」になっていると指摘しました。 須川氏は「まったくの推測」としながら、仮に、ウクライナ側がやっているとすれば、その目的は「米国にプレッシャーをかけること」ではないかと指摘しました。

須川氏「今のお話うかがって、ふと思ったのは、もしかしたらウクライナアメリカにプレッシャーをかけているのかもしれないなと。 どういうことかと言うと、バイデン政権は、もちろん、ウクライナを支援しているんですけども、ロシアを追い詰めてロシアが核を使うのは絶対にダメだと言っています」

岩上「この場合、戦術核ですね」

須川氏「最初は戦術核で始まっても、アメリカとの間で核の応酬になると、戦略核の話になり得るんですね。バイデンは、『そこは絶対やらない』ということで、そこだけは踏みとどまってる。 なんですけれども、『核はダメだ、核はダメだというなら、俺のところで核をやるぞ』と(原発を攻撃して、核惨事を起こすぞ)。そういうことでアメリカに圧力をかけて、『ロシアまで届く兵器をたくさんよこせ』、とかね。 とにかく、『アメリカが最新兵器をガンガンくれたら、もうクリミアだって取り戻せるんだ』というような感じかもしれないな、と。いや、なんの根拠もないんですが、あり得るなと思いました」

 岩上は、ウクライナアメリカに「戦術核」を求めているのかもしれないと問いかけました。

岩上「アメリカに対しても圧力をかけていると。『ちょっと射程の長い武器をくれ』じゃなくて、『戦術核ぐらいくれ』みたいな話ですね」

須川氏「ま、そこまでは絶対にやらないでしょうけれども」 岩上「なんでここまでするんですか、という話ですよね。敵の手に渡ったんだったら、廃墟にしてしまえ、とか」

須川氏「今の(米国がウクライナに供与している)ハイマースだと、ウクライナのところから、クリミアまでは届かないはずなんですよね。射程的には。だから例えば、(クリミアまで)射程が届く武器をよこせとか。今の武器にしても、もっと数を寄こせ、とかね。 ウクライナの要求リストには、ものすごいものがありますからね」 米国は、なぜここまでウクライナを支援し続けるのでしょうか。

岩上「先ほど、打ち合わせの時に、キエフ、つまりゼレンスキー政権とアメリカの政治的な結びつきは尋常じゃない、と。 台湾とアメリカの関係は、条約レベルじゃないけれども、国内法で台湾を防衛するんだと決めている法律があるわけじゃないですか。それに匹敵するようなものがあるんだという風にお話をいただきました。 ちょっと教えていただけますか?」

須川氏「よく言われるのが、『台湾とアメリカは準同盟関係』だと。つまり、同盟条約は1972年(中国との国交回復のために)に止めているわけですけれども、その後『台湾関係法』をつくって、台湾防衛はそのものは書いてないものの、『台湾が自力で防衛するために支援をする』ということは、法律上の根拠があるわけです。 50年来のその後の関係も含めて、準同盟関係ということで。 それに対してウクライナアメリカの間には、安保条約的なものはないわけです。ですから『同盟関係じゃない』と。 ウクライナNATOに入っていないということで、同盟じゃないから、台湾とアメリカの関係、あるいは日米関係とは違うんだというのが、日本で行われている解説です。 だけど、実際はウクライナアメリカは、過去10年、特に2014年以降、ものすごく緊密になってきています。多分、ウクライナ側の働きかけがかなり強くて、トランプ政権はちょっと別にすると、バイデンさんを含めて、民主党政権のもとで、かなり『ずぶずぶ』になって。 僕も、ウクライナ紛争が起きるまで、見落としていたんですけれども、去年の11月か12月に、ゼレンスキーがワシントンに行って」

岩上「侵攻の直前ですね」

須川氏「はい。ゼレンスキーがワシントンに行って、アメリカとウクライナの間で、安全保障の協力に関する検証、チャーターにサインしているんですね。 それは議会の批准が必要なものではなかったですし、条約扱いではないんですけれども、台湾防衛法に近いぐらいの中身が書いてあります。それを読むと、もう、アメリカもウクライナの防衛にコミットしてるなと読めてしまうような内容がいろいろ書いてあったんですね。 さらに、ウクライナは、この間おっしゃっていましたけれども、ここ数年、アメリカの議会とそのアメリカの政府に対してロビイングを強めていて、ものすごいお金を流して、いわば洗脳してるわけです。 そういったことを考えると、ウクライナアメリカの関係は、もう既に『準同盟』なんですよ。

以下略

日刊IWJからの引用は以上です。

 ゼレンスキー政権はロシア軍の越境侵攻以前からアメリカ政府との関係を強化しています。

 ウクライナ戦争はアメリカのウクライナへの軍事的経済的バックアップを注視しなければ本質に迫ることはできないと思います。