[1143]戦争のエスカレート

 

 ウクライナ現地はロシア軍の侵攻が激化しており、ゼレンスキー大統領は欧米各国に戦車の供与を求めています。これにたいして米欧西側諸国はウクライナ軍に攻撃力の高い戦車を援助する方向で動きはじめています。渋っていたアメリカ・バイデン大統領は主力戦車エイブラムスを提供することを発表しました。そしてアメリカの戦車援助を条件にして結論をださなかったドイツはドイツ製の戦車レオパルド2を提供することを決定しました。          

 この動きに先立ってロシア大統領府のペスコフ報道官は24日、ドイツ政府が供与を決定した場合「将来の両国関係にとってよいことにはならず、必ず避けられない傷を残すことになる」として、強くけん制していました。レオパルド2の提供でドイツとロシアの対立関係がエスカレートしていくことは必至となりました。

 急速に軍事大国化に傾く岸田政権は昨年末、防衛装備移転三原則の見直しを明らかにしており、G7各国と同調して武器援助をする可能性が高いと思われます。

 26日のNHKニュースウェブはウクライナ戦争の動きを次のように伝えています。一部を抜粋します。

2023年1月26日 
 ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。
  アメリ主力戦車「エイブラムス」31両 ウクライナに供与へ
 バイデン大統領は25日、ホワイトハウスで演説し、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対してアメリカの主力戦車「エイブラムス」31両を供与すると発表しました。バイデン大統領は「エイブラムスは世界でもっとも有能な戦車であり、ウクライナの防衛力や戦略的な目標を達成する力を高める」と述べてその意義を強調しました。バイデン政権の高官は戦車は新たに調達する必要があるため、実際にウクライナに届くのは数か月後になるとしていて、それまでの間、ウクライナ側に対し戦車の運用や維持のための訓練などを行うとしています。
 ウクライナに対してはドイツ政府がドイツ製の戦車「レオパルト2」の供与を決めるなど、各国による戦車の供与の表明が相次いでいます。
 バイデン大統領は演説の中で「きょうの発表はウクライナの主権と領土の一体性を守るためのアメリカと各国の多大な努力と取り組みの結果だ」と強調しています。一方で、バイデン大統領は「戦車の供与はウクライナの防衛を助けるものであり、ロシアへの攻撃の脅威ではない」と述べ、ロシア国内を攻撃するものではないと訴えました。
「エイブラムス」供与の経緯は
 「エイブラムス」のウクライナへの供与をめぐっては、アメリカのバイデン政権は当初、慎重な姿勢を示していましたが、ドイツ製の戦車「レオパルト2」の供与をめぐって、ドイツが慎重な姿勢を崩さない一方、ポーランドが自国の保有分の供与の許可をドイツに求めるなど、ヨーロッパの同盟国内で足並みが乱れ始めました。アメリカの政治専門サイト「ポリティコ」は25日、政府高官の話としてオースティン国防長官やサリバン大統領補佐官など安全保障政策を担当する高官がドイツ側と協議を重ね、「レオパルト2」を供与するよう求めたものの、ドイツ側は「アメリカがエイブラムスを供与しなければ、提供しない」として応じなかったと伝えています。
 このためバイデン大統領が最終的に「エイブラムス」の供与を決断したとしています。バイデン大統領としては「エイブラムス」の供与を決めることで、ドイツの決定を後押しするとともに、同盟国の結束を図る狙いがあったものと見られます。
ノルウェーも「レオパルト2」を供与へ
 ドイツ政府がドイツ製の戦車「レオパルト2」を保有している国に対してウクライナへの供与を認める方針を示したことを受け、北欧のノルウェーは、自国が保有する「レオパルト2」をウクライナに供与することを決めました。25日、ノルウェーの公共放送NRKの番組に出演したグラム国防相は戦車の供与はウクライナの強い要望に応えるためだとした上で「ウクライナの自衛のための戦いに早い段階から貢献してきたが、今後もそれを続ける。ノルウェーウクライナとともにある」と述べました。
ゼレンスキー大統領「勝利への重要な1歩」
 アメリカのバイデン大統領がウクライナ主力戦車「エイブラムス」を供与すると発表したことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、SNSで「勝利への重要な1歩だ」と述べ謝意を示しました。そして欧米各国によるウクライナへの戦車の供与の表明が相次ぐなかで「きょう、世界はウクライナの解放という共通の目標に向けてかつてないほど団結している。われわれは前進している」と述べ、戦車の供与の重要性を強調しました。
ロシアの専門家「ロシアにとって極めて深刻」
 欧米からの戦車の供与について、安全保障に詳しいロシアの専門家 ドミトリー・ソロンニコフ氏は25日、NHKのオンライン取材に応じ「ロシアにとって極めて深刻で、かなり真剣に対応する必要がある。ロシア軍にとっては困難な挑戦で、最大限集中して対応すべき課題となる」と述べ、これまで同じ旧ソビエト製の戦車を相手にしてきたロシア軍は厳しい戦いを強いられるという見方を示しました。
  そのうえで戦車の供与が戦況に与える影響については「ウクライナ軍は明らかに、春の終わりから初夏にかけて、攻撃に打って出ようとしている。南部の都市メリトポリやクリミアの方面に向かうことが目標だ」として、ウクライナ軍が戦車を活用し、ロシア軍が掌握している南部の都市の奪還などに向け、反転攻勢を強めようとすると分析しました。   
 また、今後のロシア側の対応については「ウクライナへの兵器の供与を止めるため、作戦を変える必要がある。ロシアはこれまでのところ、ウクライナの輸送インフラを破壊できていない」として、欧米からの戦車の供与を妨害するため、ロシア軍がウクライナ国内の鉄道など戦車の輸送ルートへの攻撃を強めていく可能性があると指摘しました。
ドイツ政府 ウクライナに戦車「レオパルト2」供与と発表
 ドイツ政府は25日に声明を発表し、ウクライナに対してドイツ製の戦車「レオパルト2」を供与すると発表しました。それによりますと、ドイツ政府はウクライナに向けた「レオパルト2」の2個大隊を速やかに編成することを目標にしていて、その第1段階としてまず、ドイツ軍から14両をウクライナに供与するとしています。
 また、「レオパルト2」は攻撃力が高い戦車としてポーランドフィンランドなどヨーロッパ各国が保有していて、「ヨーロッパのパートナー国からも順次、引き渡される」として「レオパルト2」を保有している国がウクライナへ供与することを認める方針も示しました。そのうえで声明ではウクライナ軍の兵士に対する訓練をドイツ国内で速やかに行うとしています。
 ドイツのショルツ首相は25日に議会で演説し、今回の決定に関して多くの国民が懸念を抱いているとしたうえで「私とドイツ政府に信頼を寄せてほしい。われわれは国際社会と連携していて、戦車の供与がドイツにとってリスクにはならないよう行動している」と国民に呼びかけました。
 イギリスのシンクタンク国際戦略研究所は戦闘で大きな効果を得るにはおよそ100両は必要だと分析していて、今後、各国が連携し、まとまった数が供与されるかどうかが焦点になります。
ゼレンスキー大統領「心から感謝」
 ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、SNSで、ドイツのショルツ首相と電話で会談したと明らかにし「ドイツの主力戦車や防衛支援と訓練のさらなる拡大、それに同様の兵器の供与をパートナーに許可するといった重要な決定について話があった。ショルツ首相やドイツの友人には心から感謝している」として謝意を示しました。
以上NHKニュースウェブを参照

 事実上NATOとロシアの戦争になってきました。世界中で戦争のエスカレート反対の声を強く上げなければなりません。