[1346](寄稿)医療あれこれ(その91)ー1

ペンギンドクターより
その1
皆様
 立秋を過ぎても猛暑が続いています。いかがお暮しでしょうか。
 先日、町内の防犯パトロールをしていたら、奇妙な白い花を見つけスマホで写真を撮りました。初めて見る花です。5枚の花弁があるのですが、レース編みのような糸状の裂片をもっていて、一見すると毒々しさもあります。妙な花もあるものだ、どうせ外国産だろうと思っていました。名前はわからないのが当然と諦めていたのですが、たまたま他の雑草の名を調べていたら、その花に巡り合ったのです。「カラスウリ」でした。
 ウリ科カラスウリ属、多年草、別名タマズサ、生育地は林縁、やぶ。分布は本州~九州、花期は8~9月、高さはつる性。
 晩秋あるいは初冬の雑木林の中に鶏卵よりちょっと小さな赤い果実がぶら下がって風に揺れているのを皆様もよく見ることがあるはずです。私も子どもの頃から今までよく見かけます。近くの公園でも晩秋には葉を落とした林間に赤い実が揺れていました。しかし、花にお目にかかったことは一度もありません。その理由が図鑑で判明しました。こう書いてあります。
 
 秋に赤く熟した実が吊り下がると人目を引きますが、花は夜に開き、翌朝までには閉じるのでなかなか見られません。日没後に花弁が開きはじめると間もなく糸状の裂片が現れます。匂いと花色で蜜を求める娥の仲間を呼び寄せます。よく似て5枚の花びらが広く、大きな黄色い果実をつけるキカラスウリは全国に分布しています。
 
 連日の猛暑でその花を見つけたのは朝の5時過ぎにパトロールをしていた時でした。図鑑にあるように大きく開いてはいず、早くも閉じかけていたのか、糸状(私には奇妙な髯と思えました)の裂片が見えづらくなっていた時でした。名前がわかって嬉しく、すぐに女房に教えましたが、彼女は晩秋にぶら下がっているありふれた赤い実を知らないようで、あまり感激してくれませんでした。それはともかく、パトロールの思いがけない効用が私の日常を豊かにしてくれます。
 
 本日の転送するのは菅内閣の英断による出産費用の「保険化」の問題です。
 さらに添付ファイルは、私が20年近く前に書いたエッセイです。先日二階の書斎のガラクタを整理していたら出てきたものです。自分で読み返してちょっと面白いと思ったので添付します。私は56歳の時に公的病院の院長を退職しましたが、翌年の4月からN市のH病院の院長になるよう要請されていたので、辞めるタイミングを見計らっていました。周囲からは突然の退職と思われたようですが、タイミングとしては悪くない時期でした。その経緯は、亡くなった事務局長がよく知っていましたが、いろいろありました。病院の事務局の不正の大掃除をした結果ですが、怪文書も飛び交い、私が「辞める」と事務局長に伝えたとき、彼は「すみません、先生に辞めていただければ助かります。有難うございます」とお礼を言われました。彼は拓殖短大を出た右翼でしたが、骨があり、かつ私が彼の胃がんの手術をしていたので、二人三脚で病院事務局の不正を改革したのです。
 それはともかく、おかげで、翌年の4月までの10カ月間ほど、医師になって初めて、余裕のある時を持つことができました。その余裕のある時間を称して「恩寵の時間」とし、週に2篇、A4の用紙に収まるようなエッセイを綴ることにしたのです。ふるさとのことなどから始めて、私の人生を振り返る文章などを中心にまとめたのです。その一つが添付の文章です。人に見せるつもりではなく、自分のその時々の思いを記録にとどめたので、ちょっと気取ったところもあります。(編集者註:添付文書は後日紹介します。)
つづく