[1415]ストライキの波

 

 

日経新聞が10月22日付の一面「チャートは語る」で米欧労働者のストライキによる労働損失日数をとり上げています。

 労働損失日数とは文字通りストライキによって失われた労働時間を日数に換算したものと言っていいでしょう。(専門用語としては国によって定義に違いがあるそうです。)つまり資本家にとって労働を搾取することができなくなるということで、ストライキがつづくと資本家の存立が危うくなります。

 それでもアメリカの自動車産業資本家は損失を出してもなお黒字を維持できるので、労組の4年で40%賃上げ要求を容易に認めません。先日フォードが25%で合意というニュースが流れましたが、全体的にどうなるかなおわかりません。

 ところで日経新聞によれば「労働損失日数」がアメリカで23年ぶり、イギリスで33年ぶりになったそうです。

 「チャートは語る」の筆者はストライキの波を次のように受けとめています。

「物価高が生活に影を落とし、人工知能(AI)や電気自動車(EV)などの先端技術が働く価値を揺さぶる。適正な賃上げや技術革新に応じたリスキリングなど課題は多い。成長と雇用の均衡を探り直す道は険しい。」

 一読して経営者の視線でストの背景と課題を見ています。

 AIやEVなどの先端技術が働く価値を揺さぶるといいますが、わかるようでわからない。わかりにくいのでパラフレーズします。例えばEV生産過程においてAIが労働過程の労働手段として使用されれば労働生産性が向上します。労働生産性の向上とは最小の労働をもって最大の生産物をつくることを意味します。資本家は生産性を高めるために労働手段となるものを不断に技術化します。その最先端がAIです。働く価値を揺さぶるという表現は労働者がいらなくなるということでしょう。つまりAIが労働者にとって変わるということでしょう。

 しかしAIはいくら性能が上がっても生産過程で労働主体となることはなく労働手段として機能します。資本家は労働生産性を高めるために生産過程にAIを導入するのです。リスキリングは労働者がコンピューター化された労働手段を使いこなせるようにするために教育訓練するということです。

 生産過程のAI化は人員削減を一つの目的として行われます。資本家は賃金コストを削減しさらに残った労働者の労働強化を通じてより多くの剰余価値を生産させ搾取します。

 ここに労働者がストライキでたたかう物質的根拠があります。

 技術革新による生産性向上とその裏側で進められる人員削減と労働強化は、資本主義生産様式のもとではくりかえされます。

 労働者にとってはストライキは闘いの最強の手段です。

 ストの波は生産過程のAI化=合理化攻撃の中で、労働者の雇用と生活を問うています。