トヨタ労組が平均賃上げ要求を廃止、職種職位別へ
賃上げの格差を容認
トヨタ自動車労働組合が2022年春闘で、全組合員平均で賃上げを要求する方式を廃止する執行部案を固めました。事務職や技能職などの職種や職位ごとに、ベースアップや定期昇給を含んだ標準的な賃上げの要求額を示す方向に転換する案です。具体的な要求額は今後詰め、来年2月に正式決定する予定。
トヨタ労使は18年春闘から、経営側が具体的なベースアップ額の公表をやめ、トヨタ労組も21年春闘で「1人平均9200円」を要求する一方で、要求額にベアを含んでいるかどうかについて組合内外に非開示としました。これは組織的に団結して経営側に賃金闘争をとりくむ連合の春闘からトヨタ労組が事実上外れたことを意味しています。
朝日新聞は次のように論評しています。
「トヨタ労組は今回の見直しで『(要求水準が)分かりやすくなり、組合員一人ひとりが当事者意識を持ちやすくなる』と説明する。ただ、平均での要求をやめると、過去の要求との比較ができなくなる。国内最大手の製造業として注目されるトヨタの春闘の動向が、より不透明になりそうだ。」
トヨタ労組は「組合員一人ひとりが当事者意識を持ちやすくなる」といっているようですが、「当事者意識」は他職種より多くという意識に疎外されるだろうことは警戒すべきです。会社が賃上げ格差をつけようとすることに手を貸すことになります。
平均賃上げ要求は労働組合の存在理由にかかわります。労働者は一人では会社のいいようにされるから団結して組合をつくったのです。組合員全体の賃上げ要求は本来一律であるべきなのです。組合は賃上げ闘争の一環として、回答された平均賃上げ額の配分を団体交渉のなかで話し合い格差がつかないようにたたかわなければならないのです。
平均賃上げ要求をやめ職種、地位ごとに要求するというのは、組合員を分断し自分(=当事者)のことしか考えなくなるような条件を組合の側からお膳立てするという意味をもつのです。労働者の団結を組合が壊す役割をはたすことになります。
平均賃上げ要求の廃止は会社側の意向なのかもしれません。会社は組合が労働者を会社の都合がいいようにまとめてくれれば組合幹部さまさまとなるのです。
連合はトヨタ労組の案を批判しなければならないと思いますが、容認する姿勢です。連合芳野会長は野党共闘を支持していた神津会長の後任選びで混乱した挙句に選ばれました。自動車総連をはじめとする大産別労組の野党共闘反対派によって支持されたといえます。芳野会長がトヨタ労組の賃上げ方針を「産別自決」を理由にして容認するのは目に見えています。
2022春闘は連合の内部から一律大幅賃上げの闘いをもりあげていきましょう。
連合の労働組合員