[993]ウクライナの労働法改悪


 ウクライナ戦争の報道の陰で労働者の労働条件や労働運動については公式メディアではほとんど報道されません。あたかもウクライナの政府資本家階級と労働者階級は対立関係がなく一丸となってロシア軍と戦っているかのようなイメージがつくられています。
 戒厳令下ですが、ゼレンスキー政権に対していま労働法改悪反対を掲げてウクライナ労働組合はたたかっています。
 労働組合の国際組織「インダストリオール」のニュースを紹介します。

ウクライナで悪名高い労働法採択

2022年7月20日
 国際社会と国内の労働組合から公に多数の訴えが寄せられたにもかかわらず、ウクライナ議会は、従業員250人未満の企業が賃金体系や労働時間・労働条件、契約終了条件を直接交渉できるようにする労働法修正を採択した。
 ウクライナ戒厳令は、すでに労働者の権利を大幅に制限しているが、これらの制限は明らかに期間限定である。労働者はロシアの攻撃によって特に大きな打撃を受けており、ILO(国際労働機関)の推計ではすでに480万人の雇用が失われた。
 法律第5371号の採択で、中小企業の労働者は法的保護の対象から除外される。新しい「労使関係を規制するための契約制度」が定められ、すべての労働条件が、労働法ではなく雇用契約によって決定されるようになる。 労働法に定める現在の厳格な根拠の代わりに、雇用契約で解雇の根拠が決まるようになるため、解雇は使用者の裁量に委ねられる。
 労働組合は法律の策定から排除された。ウクライナ自由労働組合総連盟によると、この法律は、ウクライナ憲法ILO第87号および第158号条約に直接違反して、労働者と労働権の代表・保護における組合の役割を除外している。 インダストリオール執行委員のバレリー・マトフAtomprofspilka会長は言う。 「立法者は狡猾な戦術を利用し、労働組合が準備した提案や策定を考慮に入れていない。組合は主要なソーシャル・パートナーであり、実際的な労働法の分野の主たる専門家だ」 「立法者は以前に採択できなかった変更を盛り込んでおり、それによって法律自体と労働法の完全性を歪め、国際基準に違反している。その結果、ウクライナの数百万人の労働者の権利が悪化してしまった」
  ウクライナ自由労働組合総連盟のミハイロ・ボリネッツ議長は言う。 「労働者の権利、国際労働基準、欧州の価値観の軽視は容認しない。ウクライナ再建の効果と将来の同国の成功は、労働者の権利がどの程度保護されるかによって決まる、と私たちは主張している」 インダストリオールが、法律第5371号の促進をめぐる問題に関して連帯し、ウクライナ当局に要請してくれたことに感謝している。このような支援は労働者の権利擁護に役立つ」
 今回の労働法変更には、戦争が始まるずっと前から、ILOはじめ専門家から否定的な意見が寄せられていた。ILOは2021年、契約の自由意志が実際には「使用者の裁量」に委ねられることになる可能性が非常に高いと述べた。 「これは恐ろしい展開だ。ウクライナが団結と連帯を必要としているときに、ウクライナ議会が労働法の修正を優先課題とみなすことは受け入れ難い」とアトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は言う。 インダストリオールとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合欧州連合への最近の書簡で、労働法をめぐる最近の動向についての懸念を表明し、労働権と労働組合権がEU基準に沿って適切に尊重・実施されることを強調した。

今回は以上です。
 その後ゼレンスキー大統領が議会で可決された法案に賛成の署名をしたかどうか私は知りえません。署名すれば法は成立します。ウクライナのメディアの中には対ロシア戦争を利用して法改悪をなそうとしているという意見すらもあります。
 階級を超えて団結して祖国を防衛するという戦いは結局資本家階級が労働者階級に犠牲を強いることになるということを警戒しなければならないと思います。