[1092]池上ー保坂対談のつづき

池上−保坂対談の感想文が間延びしましたが、保坂の対談のまとめを考えることが大切だと思うので続けます。焦点は米国の民主主義に移ります。

 保坂が次にように言います。

 「戦後の日本に入ってきたアメリカンデモクラシーの現実を見ることがなく、長い間、私たちは理想だと思ってきましたが、米国に行くとひどい格差や差別がある。これは違うじゃないかと気が付いたわけです。米国の民主主義が本当は、自由、平等ではないと皆が気付いても継続していくのでしょうか。今は理想主義的視点が必要だとも思いますね。現代は、自由、平等、博愛をベースにした民主主義の概念が形骸化しつつあると感じます。ですから民主主義の再構築ということが迫られているのです。」

 この対談のテーマは本来の民主主義を継承しなければならないということです。

 しかし戦後民主主義アメリカンデモクラシーを移植したものでしかありませんでした。保坂も「理想だと思って」来たがこれは違うと気づいたと言います。それでも米国式民主主義を継承していくのかと問いかけます。そしてフランス革命の理念である自由•平等•博愛が今や形骸化しており、民主主義を再構築しなければならないと言い、新しい制度を作らなければならないとも言います。

 私は戦後民主主義フランス革命の「自由•平等•博愛」も、行き着いた先が今なのではないかと思います。

 そもそもフランス革命は資本家が主導した革命です。あの革命で労働者は封建主義の紐帯から解き放たれ、二つの自由を得ました。生産手段からの自由と労働力を売る自由です。資本主義社会の自由とはこの自由を意味しているのです。

 労働によって生みだされる剰余価値を搾取することを基礎として成り立っている資本主義は数百年を経て危機に陥っています。資本家階級が資本主義社会をll統治するイデオロギーとしての議会制民主主義はほころんできているのです。本来の民主主義を希求するのは危機に立つ資本家階級がなげすてた「本来の民主主義」を追いかけるようなものです。

 しかし資本制社会は自然には崩壊しません。労働者階級に犠牲を転嫁して生き延びようとします。確かに資本主義を廃絶して新しい制度をつくるのは難しい。革命ロシアが後年に崩れた原因を探り教訓化する作業を地道に行うほかに王道はないと思います。