[1155](寄稿)医療あれこれ(その75)−3

ペンギンドクターより
その3
 先日、TBSの50代の向井アナウンサーが「顎下腺がん」で亡くなったという報道がありました。その報道のせいではありませんが、先ごろ検診で中年の女性の質問がありました。
 右あごの下に「グリグリ」が2-3年前からあるのだけれど、ちょっと診てほしいとのことでした。触ってみるとゴツゴツした硬さではなく、表面は平滑です。しかし、やわらかくはなく「弾性硬」という表現が適切でしょう。よく聞いてみると、昨年検診で、「耳鼻咽喉科」で診てもらうように言われて、近所の耳鼻科受診したが、ちょっと触っただけで「大丈夫」ということだった。とくに検査は何もしていないとのことでした。
 結論を急ぎますと、私は検診の責任者を呼び、「早めにしかるべき病院の耳鼻科受診」をさせたいがどうすればいいかと相談しました。結局、当院には耳鼻科がないので、私自身が電子カルテの操作方法を聞いて、私の名前でA医大耳鼻科宛の紹介状を書きました。検診受診者が沢山いたので、それがすべて終った後にその仕事はまわしました。さらにその女性の他の検査がすべて終った後に戻ってきてもらい、紹介状も渡しました。
 その際、私は自分が書いた紹介状の文章を見せながら(本人から聞き取ったことを繰返しながら)読みあげて渡しました。なぜなら、患者さんに余計な心配をさせないように、いつも一般外来で私がしていることです。診断名としては「顎下腺腫瘍の疑い」として、経過を書き、念のためエコーなどの検査が必要と思われます。よろしくお願いします。という文面です。
 患者はもちろん喜んでいました。気になっていたから、マスクを外して私に相談したのでしょう。がんというものは一般には硬くゴツゴツしていますが、例外もあります。何より、私は彼女が受診した耳鼻科の医師に以前から不信感を持っています。私は県医師会の役員でしたから、昔はB県の開業医のほとんどを知っていました。また県は違いますが、日赤の勤務やY記念病院のパートが長いので、開業医をよく知っています。K市は決して「民度」(この言葉はコロナ感染で麻生副総理が使用して顰蹙を買いましたが)が高くありません。いい人が多いというべきか、昔から医師がふんぞり返っています。特に古い医師はそうです。だから、昨年のように耳鼻科に行けと伝えただけでは駄目なのです。今のA医大の耳鼻科のレベルは知りませんが、少なくとも検査はしてくれるはずです。がんか否かはともかく結論は出るでしょう。
つづく