[1669]オルバン、ロシア訪問

 

 6日ハンガリーのオルバン首相がEU議長としてロシアプーチン大統領と会談しました。オルバンの独断でプーチンと会いウクライナ和平のロシア案をうけとり発表しました。オルバンはウクライナ戦争に関しては一貫してロシア支持の立場に立って行動しています。ロシアとの経済的結びつきが強いハンガリーオルバン首相はEU議長としてロシア側の立場に立った和平案を進めはじめました。

 オルバンはEU諸国に非難されることが予想される中、無理を承知で行動しています。しかしこういうことがやれること自体、こんにちのウクライナ戦争をめぐる国際的パワーバランスが動いていることを意味しています。

 ウクライナ・ゼレンスキー政権はアメリカをはじめとしたNATO諸国家の国益と立場を同じくしており一体化しているといっていいでしょう。しかし、イギリスではスナクの保守党が総選挙で大敗し、労働党新政権のスターマーはウクライナへの「揺るぎない」支援をゼレンスキー大統領に伝えたといわれていますが、ウクライナへの支援の行方は従来通りにはならないでしょう。フランスでも与党が負けマクロンウクライナへの支援の軌道修正を余儀なくされるでしょう。

 EU諸国は口で言っていることとは裏腹に、ウクライナ戦争の帝国主義和平工作に踏みだしたといっていいと思います。

 ハンガリーのオルバンの動きはプーチンと一体化した反欧米の政治的アドバルーンです。

 寄ってたかってウクライナ戦争を自国国益に利用する東西の権力者にいささかの幻想を持ってはいけないと私は思います。

 

以下yahoo!ニュースとNHKウェブです。

 

ハンガリー首相がモスクワ訪問、プーチン氏と会談-EU首脳ら非難 7/5(金) 20:42 Yahoo!ニュース (ブルームバーグ

 

 ハンガリーのオルバン首相が5日、モスクワを訪問しロシアのプーチン大統領と会談した。オルバン氏は数日前にウクライナのキーウを訪れたばかり。同氏は「平和使節」を自称するが、ハンガリーは輪番制の欧州連合(EU)議長国を務めるだけに、他のEU加盟国首脳からEUを代表する権限は同氏にないと非難の声が上がっている。

 ハンガリーは7月1日に任期半年のEU議長国に就任。オルバン氏はプーチン氏との会談に先立ち、EU全体を代表して話す意図はないと説明した。 だが、モスクワでプーチン氏と並んで立ったオルバン氏は、EU議長国としての地位が会談に特別な意味を加えていると主張。「戦争の両陣営とまだ話せる状態にある国の数は減り始めている」と述べた。

 一方、プーチン氏はオルバン氏のキーウ訪問に言及し、戦争の「細かな差異」を同氏に伝えたいと語った。 このモスクワ訪問は、議長国としてのハンガリーの振る舞いを既に懸念していた他のEU加盟国の厳しい反応を呼んだ。オルバン氏のロシア到着後、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は「融和策でプーチン氏は止められない」とX(旧ツイッター)に投稿した。

 リトアニアのナウセダ大統領はさらに踏み込み、「本当に平和を模索するなら、残虐な独裁者と握手はしない。全ての努力をウクライナ支援に注ぐはずだ」とXで主張した。

 ドイツのショルツ首相はオルバン氏のロシア訪問計画について事前連絡はなかったと記者団に明らかにし、「EUの外交政策はミシェル大統領が代表する欧州理事会が担う。ハンガリーではない」と指摘。「ウクライナはEUの支持を頼りにできる」と続けた。

 ロシア大統領府は、プーチン氏とオルバン氏の会談は少なくとも2-3時間続くとの見通しを示した。

以上ブルームバーグ

次はNHKウェブニュースです。

EU議長国のハンガリー首相がロシア訪問 プーチン大統領と会談 2024年7月6日

プーチン大統領 シェアする EUヨーロッパ連合の議長国を務めるハンガリーのオルバン首相は、ロシアを訪れてプーチン大統領と会談しました。オルバン首相はウクライナでの和平に向けて引き続き取り組んでいく考えを示しましたが、ウクライナ政府は不快感を示しています。

 5日、ロシアの首都モスクワを訪れたハンガリーのオルバン首相は、プーチン大統領ウクライナ情勢などについて意見を交わしました。 会談後の記者発表でプーチン大統領は「ロシアが表明した条件でウクライナでの紛争を完全に終結させたい」と述べ、ロシアが一方的に併合したウクライナの4つの州からのウクライナ軍の撤退などが停戦の条件になると改めて主張しました。

 一方、オルバン首相は「ロシアとウクライナの立場は大きく隔たっている。戦争の終結に近づくためには多くの段階を踏まなければならないが、われわれは重要な一歩を踏み出した。引き続き取り組む」と述べました。 ハンガリーは今月からEUの議長国となっています。 ロシア寄りの姿勢で知られるオルバン首相はウクライナ支援を続けるEUを批判してきたほか、今月2日にはウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、ロシアとの一時的な停戦と和平交渉の開始を検討するよう促しました。

ウクライナ外務省 不快感示す

 ウクライナ外務省は5日、コメントを発表し、「ウクライナによる承認や調整なく行われた」と強調した上で「ウクライナ抜きの合意などありえないという原則は、おかすことができないものだ」としています。 また、ウクライナが提唱する和平案について話し合うため先月スイスで開かれた首脳級の会議にハンガリーも参加したことに触れ「この和平案が公正な平和を回復するための唯一の現実的な方法だ」と指摘しています。 オルバン首相は今月2日、ウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領に対してロシアとの一時的な停戦などを検討するよう促しました。 ウクライナとしては、オルバン首相がその直後にロシアを訪れ、プーチン大統領と会談したことに対して不快感を示した形です。

以上NHKウェブ

 日本の報道は一貫してウクライナのゼレンスキー政権の応援団のような立場にたっています。東西資本主義の争闘戦という性格をもつウクライナ戦争を二者択一的な思考法で報じるのは危険です。アメリカ側の利益を守る立場に立った戦時報道になります。記事の読者としてはそれを踏まえてウクライナ戦争をめぐる報道を読まなければいけないと思います。

 例えば「ロシアが一方的に併合したウクライナの4つの州からのウクライナ軍の撤退などが停戦の条件になると改めて主張しました。」という一文です。併合に関してはどのメディアも同じ表現を使います。

 客観的事実としては「ロシアが併合したウクライナの 4つの州」です。領土問題に関しては文章表現に政治的価値判断を入れると戦争当事者の一方を支援することになります。「一方的」かどうかは4州の住民が判断すべきことです。ロシアへの編入は地元民の意思も入っているようです。地元の方々の生活と気持ちは外から方向づけしてはいけないと思います。

 私は2022年2月24日のロシア軍の越境侵略に反対すると同時にウクライナNATO加盟と欧米諸国のウクライナ国家への軍事的支援に反対します。

 ではどうすればいいのかという疑問が出されますが、それは大体は二者択一の思考法の枠組みをつくってどちらかの軍事行動を正当化するための批判論理です。

 ウクライナをめぐる一切の戦争行為に反対する闘いから恒久平和を実現する道をきり拓くことができます。