[1722]関東大震災101年

 

9月1日の「天声人語」が関東大震災の時の朝鮮人虐殺事件について興味深いことを書いています。

 朝鮮人が放火をしたという流言の中心となった自警団は、震災の前から組織化されていたという。震災の5年前、1918年の米騒動は警察が消防組や在郷軍人会と連動して鎮圧につながった例もあった。成功例に注目した警察は民衆を威圧せず取り込む「民衆の警察化」に力を入れたそうです。(佐藤冬樹著『関東大震災と民衆犯罪』)

記者は「震災での迅速な自警団の結成には下地があった。『コメ不足』を案じる今、その事実にようやく気づいた」といいます。ノロノロ台風下の今、震災時に台風が通過中だったことに思い至り、強風で火災が広がった恐怖から流言を信じた人はいなかったかと書いています。コメ不足と台風下で記者はSNS社会でその恐れはないかと連想しています。

 おおいにあります。コロナ下で自粛警察が「活躍」しました。コメ不足でもないのにスーパーのコメは売り切れてしまうようなこんにち、流言はSNSに乗って瞬時に駆け巡り多くの人が付和雷同していまます。

 天声人語はおわりに一つ風刺を効かせています。

「歴史は繰り返し学ぶたび、新たな気づきがある。それができるのも、101年前の記録が残され、現在も発掘されて検証と研究が続いているからだ。そう、記録はある。」と結ばれています。

 8月31日の朝日新聞によれば、朝鮮人虐殺に関して政府は15年2月に「調査した限りでは、政府内に事実関係把握することができる記録が見当たらない」という閣議決定をしています。また朝鮮人犠牲者の追悼式典に8年連続して追悼文を送っていない小池都知事は今年も送らないという。記者会見でその理由を問われた知事は「全ての方々に哀悼の意を表している」と従来の答弁を繰り返しました。虐殺の事実を問われて「何が事実かは歴史家ひもとく」と言いました。

 天声人語は「記録はある」と釘をさしています。